建設会社の​親族内承継と​株価対策|​自社株評価を​下げる2つの方法

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子どもや親族に会社を引き継がせようとしたとき、「自社株の評価が高すぎて相続税・贈与税が払えない」という問題に直面する建設会社の経営者は少なくありません。建設業は設備・機械・土地等の固定資産を多く持つ業種であり、純資産が積み上がっていると自社株評価が高くなりやすい傾向があります。本記事では、承継前に取り組むべき株価対策3つと、事業承継税制の活用を実務的な観点から解説します。

目次

非上場株式の評価方法——建設業に多い評価パターン

非上場の中小建設会社の株式は、国税庁の「財産評価基本通達」に基づき評価されます。会社規模によって適用される評価方式が異なります。

会社規模適用される評価方式評価の傾向
大会社類似業種比準価額(純資産価額の方が低ければそちらを選べる)株価が低くなりやすい
中会社類似業種比準方式+純資産価額方式の折衷中程度
小会社純資産価額方式(または折衷方式の低い方)株価が高くなりやすい

中小の建設会社は小会社・中会社に当たることがあり、小会社は純資産価額方式(会社の純資産をそのまま株価に反映する方法)または折衷方式、中会社は類似業種比準価額と純資産価額の折衷方式で評価します(財産評価基本通達179)。そのため、純資産の大きさが株価に強く効きます。設備・機械・不動産等の資産が多い建設会社では、この方式で株価が高く算定されることが多いです。

方法1:役員退職金の支給で利益・純資産を圧縮する

ビルの前で握手する作業着の二人の手元
ビルの前で握手する作業着の二人の手元(イメージ)

オーナー経営者が代表を退任するタイミングに適正な役員退職金を支給することで、会社の利益・純資産を一時的に圧縮し、株価評価を下げる効果が期待できます。

役員退職金の適正額の目安

役員退職金の税務上の適正額は「最終月額報酬×役員在任年数×功績倍率」で算定します。功績倍率は代表取締役で通常2.0〜3.0の範囲が目安とされていますが、会社の規模・業績・在任年数等により異なります。過大な退職金は損金不算入になる可能性があるため、事前に税理士と金額の検討・議事録の整備を必ず行ってください。

株価評価への影響

退職金を支給すると、支給した時点で会社の純資産が減り、その事業年度の利益も減ります。類似業種比準方式では「1株あたり利益」が評価要素の一つになるため、退職金支給年度に株価評価が下がる効果があります。

方法2:含み益のある資産の整理で純資産評価を下げる

純資産価額方式では、会社が保有する資産を相続税評価額で評価します。帳簿価額より相続税評価額が高い「含み益資産」があると、株価評価が押し上げられます。

純資産の評価を押し上げやすい資産

  • 土地・不動産:路線価・倍率方式で評価されるため、取得価額より高くなることが多い
  • 有価証券:株式・投資信託等の時価が帳簿価額を上回っている場合
  • 積み上がった現預金:現預金に含み益は無いが、使途のない現預金はそのまま純資産を押し上げる

対応策の例

  • 事業に不要な土地・遊休不動産の売却または整理
  • 役員退職金・設備投資等で現預金を合理的な範囲で使用する
  • 含み益のある有価証券の一部を計画的に売却・換金する

ただし資産売却は譲渡所得税・法人税等の影響も生じるため、株価対策単体で判断せず、税理士と総合的な試算を行ってから実施してください。

方法3:事業承継税制(特例措置)で贈与税・相続税を猶予する

作業着の人の横の机にヘルメットとノートパソコン
作業着の人の横の机にヘルメットとノートパソコン(イメージ)

自社株の評価を下げる対策が間に合わない場合や、評価額を下げても税負担が重い場合は、税の納付を猶予する事業承継税制を確かめます。株価を下げる制度ではありません。特例措置を使うには特例承継計画を都道府県知事に出す必要があり、提出期限は2027年(令和9年)9月30日です(中小企業経営承継円滑化法施行規則 第17条第2項・中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」)。これから計画する会社は、期限に間に合うかを税理士に確かめてください。

制度の概要

非上場株式等の贈与・相続について、一定の要件を満たした場合に贈与税・相続税の全額(または一部)を猶予・免除する制度です。

項目内容
対象非上場株式等の贈与・相続
猶予割合特例措置:贈与税100%・相続税100%を猶予(中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」)
特例承継計画の提出期限2027年(令和9年)9月30日まで(都道府県知事へ提出・中小企業庁)
贈与・相続の実行期限2027年12月31日まで
主な要件先代経営者の代表退任・後継者の代表就任 等(雇用の8割維持は、満たせなくても理由を書いた報告書を出せば猶予が続く)

特例措置の注意点

  • 特例承継計画の提出が先決。計画を出していなければ特例措置は使えない。
  • 猶予取消し要件(後継者が代表を離任・株式を売却等)に該当すると、猶予が取消しになり全額納付が必要になる場合がある。
  • 制度の適用には経営承継円滑化法の認定申請等の手続きが必要なため、早めに税理士・行政書士に相談することが不可欠。

株価対策に必要な準備期間の目安

いずれの対策も、実施するタイミングと評価時点のズレを考慮して計画する必要があります。

対策効果が現れるまでの期間着手すべきタイミング
役員退職金の支給支給した事業年度の株価に反映株式移転の1〜2事業年度前
資産の整理・圧縮実施した事業年度末の純資産に反映株式移転の1〜3年前
事業承継税制(特例措置)贈与の翌年1月15日までに都道府県知事へ認定申請(相続は相続開始から8か月以内)特例承継計画の提出期限は2027年(令和9年)9月30日=早めに計画を出す

→ 親族内承継・M&A双方の選択肢の比較については「建設会社の後継者不在問題——第三者承継(M&A)を選ぶ前に確認すべき5項目」も参照してください。

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株価の評価や承継の進め方は、顧問の税理士のほか、国が各都道府県に置いている「事業承継・引継ぎ支援センター」でも相談できます(相談は無料)。どの方法を選ぶにしても、決算の数字が固まる前の早い時期に相談を始めると、打てる手が多く残ります。

まとめ

  • 建設業の中小企業は純資産が積み上がりやすく、自社株評価が高くなりやすい。対策を打たずに株式を移転すると相続税・贈与税の負担が後継者に重くのしかかる。
  • 役員退職金の活用・資産圧縮・事業承継税制の3手法を組み合わせることで株価対策の効果が高まる。いずれも実施タイミングと評価時点の関係が重要で、計画的な実行が必要。
  • 事業承継税制の特例措置は、特例承継計画を2027年(令和9年)9月30日までに出す必要がある。贈与・相続の実行は2027年12月31日までのため、使うなら税理士と都道府県の窓口に早めに相談して計画を立てる。

今すぐできる次のアクション

  1. 顧問税理士に直近の決算書を基にした自社株評価額の試算を依頼する。評価額が把握できれば、3つの対策のうちどれが有効かを判断できます。
  2. 事業承継税制を検討するなら、認定経営革新等支援機関(税理士・商工会等)と都道府県の窓口に相談する。特例承継計画の提出期限は2027年(令和9年)9月30日のため、間に合うかを先に確かめてください。

取引先や下請の会社が建設業許可を持っているかは、全国の建設業許可業者を業種や地域から調べられる建設業許可データベースの企業検索で確かめられます。

出典と参考(2026年10月1日に確認)

この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

よくある質問

Q: 建設会社の自社株の評価が高くなりやすいのはなぜですか?

中小の建設会社は小会社・中会社に当たることがあり、評価に会社の純資産を株価に映す純資産価額方式が使われます(中会社は類似業種比準価額との折衷)。機械・設備・土地などの資産や、積み上がった現預金が多いと、その分だけ株価が高く出やすくなります。

Q: 役員退職金を払うと、株価はどう下がりますか?

支給した事業年度の利益が減り、その後の純資産も減るため、評価が下がる効果が期待できます。金額は「最終月額報酬×在任年数×功績倍率」が目安で、多すぎると損金にならないため、税理士と金額と議事録を先に整えます。

Q: 事業承継税制の特例措置は、まだ使えますか?

特例措置を使う前提の特例承継計画は、提出期限が2027年(令和9年)9月30日です。まだ計画を出していない会社は、期限に間に合うかと、特例措置と一般措置のどちらが合うかを、税理士や都道府県の窓口で確かめてから承継の計画を立ててください。

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この記事を書いた人

中小建設企業の経営改善・財務強化・事業承継を専門とするビジネスアドバイザー。建設業特有の下請管理・支払サイト問題・財務諸表の見方を中心に、経営基盤の強化につながる実務情報を発信。建設業の経審(経営事項審査)と公共工事受注の仕組み、労働環境改善・働き方改革対応の最前線情報にも精通。M&A・事業承継・廃業検討中の建設会社向け情報も担当。

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