福岡県筑紫野市の外構工事業者が破産手続きを開始したニュースをご覧になった経営者の方も多いのではないでしょうか。外構工事は個人の施主からの受注が多い業態であり、一件の事故や賠償請求が経営を直撃するリスクを常に抱えています。建設業賠償責任保険は、こうした経営リスクから会社を守る重要な手段です。しかし、工事種別によって必要な補償内容は大きく異なり、適切な保険を選択しなければ「保険に入っていたのにカバーされない」という事態に陥ります。本記事では、実際の破産事例や労災事故の実態を踏まえながら、外構工事・解体工事・足場工事など工事種別ごとに必要な賠償責任保険の選び方と、経営リスク管理の具体的な方法を解説します。
外構工事業者の破産事例が示す経営リスクの実態
個人からの受注が多い外構工事業界が抱える脆弱性
外構工事業界は、口コミや紹介などによる個人のお客様からの受注が多い業態です。この構造は、大手建設会社との継続的な取引がある業態に比べて、経営基盤が脆弱になりやすい特徴があります。
福岡県筑紫野市で住宅のフェンス・門扉・カーポートなどの施工を手掛けていた外構工事業者は、2026年4月23日に福岡地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けました(負債 約1億円・帝国データバンク)。外構工事は一件あたりの工事金額が比較的小規模であるため、一度の事故や賠償請求で受ける経営ダメージが相対的に大きくなります。たとえば、施工した擁壁の崩壊や、隣地への損害といった事故が発生した場合、賠償額が数百万円から数千万円に達することもあります。こうした賠償金を自己資金で支払うことは、多くの中小外構工事業者にとって致命的な負担となります。工事を任せる相手の許可の業種と有効期限は、都道府県別・業種別の建設会社の一覧から会社ページを開いて確かめておけます(載っている情報は、会社ページの「データの更新日」の時点のものです)。
資材高騰と工期延長が生むリスクの増大
資材の値上がりや納期の遅れで工期が延びると、これに伴う損害賠償リスクも高まっています。
顧客との契約では完成時期が明記されているため、資材調達の遅延を理由に工期を延長しても、顧客から損害賠償を請求される可能性があります。特に外構工事は新築住宅の引き渡しに合わせて完成を求められるケースが多く、工期遅延が顧客の入居時期に影響を与えた場合、賃貸住宅の家賃相当額などを請求されることがあります。こうした工期の遅れによる損害は、多くの賠償責任保険では補償の対象外です。契約の段階で、遅れたときの取り決めを施主と確かめておくことが大切です。
工事種別ごとに異なる賠償責任保険の選び方

外構工事・解体工事に必要な補償内容
外構工事と解体工事では、リスクの性質が大きく異なるため、必要な建設業賠償責任保険の内容も変わります。
外構工事の主なリスクは以下の通りです。
- 施工した擁壁・ブロック塀の倒壊による隣地や通行人への損害
- 掘削作業による隣地建物の傾斜・損傷
- 施工不良による構造物の崩壊
- 敷地外への土砂流出
外構工事の賠償責任保険では、完成後の欠陥で第三者に損害を与えた場合の補償(生産物・完成作業の危険)が重要です。なお、2020年4月の民法の改正で「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められました。施主に対する直し・代金の減額の責任そのものは、ふつう賠償責任保険の対象外です。また、掘削作業を伴う場合は「地盤変動による損害」をカバーする補償が必須です。
解体工事の主なリスクは以下の通りです。
- 重機による隣地建物の損傷
- 粉塵・振動による周辺住民への健康被害
- 解体物の飛散による第三者への損害
- アスベストなど有害物質の飛散
解体工事では、「周辺建物への損害」と「粉塵・振動に起因する損害」の補償が特に重要です。住宅密集地での解体工事では、わずかな作業ミスが隣地への重大な損害につながるため、補償額は1億円以上が目安です(公の基準ではありません)。
足場工事の労災事故と賠償責任保険の関係
建設業の労働災害で亡くなる人の原因は、墜落・転落がいちばん多く、足場の上の作業は特に注意が要ります。
足場工事では、作業員のけがへの備えは賠償責任保険とは別の保険で考えます。労災保険は政府管掌の制度として基本的な補償を提供しますが、重度の後遺障害や死亡事故の場合、労災保険だけでは被災者やその家族への十分な補償とならないケースがあります。
作業員のけがに備える保険は、第三者への賠償責任保険とは別のものです。次のように分けて考えます。
- 労災保険の給付に上乗せする補償:法定外労災の保険
- 労災保険の給付を超える損害賠償の請求への備え:使用者賠償責任の保険
- 一人親方や事業主自身のけが:労災保険の特別加入と、傷害の保険
足場工事を主業とする事業者は、第三者への賠償責任だけでなく、作業員や事業主自身を守る補償内容を重視して保険を選択することが経営リスク管理の基本となります。
インボイス制度下での一人親方の保険選択
経営圧迫時代に必要な最小限の保障ライン
インボイス制度の導入により、一人親方の経営環境は大きく変化しました。免税事業者のまま事業を継続すると取引先を失うリスクがあり、課税事業者となれば消費税の納税負担が発生します。この経営圧迫の中で、保険料の負担も重くのしかかります。
しかし、保険料を節約するために無保険で事業を続けることは、より大きな経営リスクを抱えることになります。一人親方が最低限確保したい建設業賠償責任保険の補償内容の目安は以下の通りです(当サイトが考える目安の例で、公の基準ではありません。実際の額は取引先が求める額と保険会社の見積もりで決めます)。
対人賠償:1億円以上
作業中の事故により通行人や近隣住民に怪我を負わせた場合の補償です。死亡事故や重度の後遺障害が残る事故では、賠償額が数千万円から1億円を超えることもあります。
対物賠償:5,000万円以上
作業中に隣地の建物や車両を損傷させた場合の補償です。住宅密集地での作業では、一つのミスが複数の建物に被害を及ぼす可能性もあるため、十分な補償額を確保しましょう。
受託物賠償:1,000万円以上
顧客から預かった建物や設備を損傷させた場合の補償です。リフォーム工事や設備工事では必須の補償項目です。
一人親方向けには、工事の種類や規模に応じて月単位で加入できる掛け捨てタイプの建設業賠償責任保険もあります。年間を通じて工事量が変動する場合は、こうした柔軟な保険商品を活用することで、保険料負担を最適化できます。
保険料を抑えつつリスクをカバーする実務的な方法
経営が厳しい状況でも、賠償責任保険は削減すべきでない経費です。ただし、以下の方法で保険料を適正化することは可能です。
工事種別を限定する
すべての建設工事を対象とする包括的な保険ではなく、実際に行う工事種別だけに限定した保険を選ぶことで、保険料を抑えられる場合があります。
免責金額を設定する
一定額以下の損害は自己負担とする免責金額を設定することで、保険料を抑えることができます。ただし、免責金額は自己資金で対応できる範囲内に設定することが重要です。
複数の保険会社で見積もりを取る
建設業賠償責任保険は保険会社によって保険料が大きく異なります。同じ補償内容でも、年間保険料が数万円単位で変わることもあるため、複数社の見積もり比較は必須です。
見積りの相手や協力会社を探すときは、全国の建設業許可業者を業種や地域から調べられる建設業許可データベースの企業検索もお使いください。
よくある質問

Q1. 外構工事で賠償責任保険に加入していないと破産リスクは高まりますか?
高まります。外構工事では第三者の車両損傷、隣地への損害、通行人の怪我など高額賠償リスクが常にあります。保険未加入の場合、一度の事故で数百万円から数千万円の賠償責任を自己資金で負担することになり、資金繰りが悪化し、経営が立ち行かなくなるおそれがあります。
Q2. 外構工事の賠償責任保険はどのような事故をカバーできますか?
主に工事中の第三者への損害をカバーします。具体的には、重機操作ミスによる隣家の塀破損、資材落下による通行人の負傷、工事車両による物損事故、地盤沈下による隣地建物の損傷などです。生産物賠償責任も付帯すれば、完成後の欠陥による事故も補償対象となります。
Q3. 外構工事業者が破産する主な原因は何ですか?
破産の原因は会社によって異なり、記事の冒頭の筑紫野市の会社の原因が賠償の事故だったとは報じられていません。一般には、受注の減少や材料費の上昇による資金繰りの悪化が多い原因です。そのうえで、賠償責任保険に入らないまま大きな事故が起きると、一件の賠償で経営が立ち行かなくなるおそれがあります。
Q4. 工務店が外構工事を外注する際の保険確認ポイントは?
外注先の賠償責任保険加入状況を必ず確認しましょう。保険証券のコピー提出を求め、補償限度額が目安の1億円以上か(公の基準ではありません)、保険期間が有効か、工事内容が補償対象かをチェックします。未加入業者に発注すると、事故時に元請として責任を問われるリスクがあります。
Q5. 外構工事の賠償責任保険の年間保険料相場はどれくらいですか?
年商や従業員数により異なりますが、保険料は補償限度額や工事の種類で変わります。工事内容のリスクや過去の事故歴によって保険料は変動するため、複数社から見積もりを取ることをお勧めします。
まとめ
建設業賠償責任保険は、一度の事故や賠償請求から会社を守る経営の生命線です。特に外構工事業者のように個人受注が中心の業態では、賠償金の支払いが直接的に経営破綻につながるリスクがあります。工事種別ごとに必要な補償内容は大きく異なるため、外構工事なら完成後の欠陥による第三者への損害、解体工事なら周辺建物への損害、足場工事なら作業員のけがに備える別の保険といった、自社の事業内容に合った保険選択が重要です。インボイス制度による経営圧迫の中でも、対人賠償1億円以上、対物賠償5,000万円以上という目安(公の基準ではありません)に届いているかを確かめましょう。まずは現在の保険内容が自社のリスクをカバーしているか、複数の保険会社で見積もりを取って確認することから始めましょう。
出典と参考(2026年10月1日に確認)
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この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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