中国道のつり足場落下事故の教訓|​アンカーとつりチェーンの確認

企業検索はメインサイトから

建設業許可データベースのトップへ
建設現場の足場を下から見上げた様子

2025年1月、広島県廿日市市の中国自動車道で、橋の床版を取り替える工事のつり足場が落下し、作業員5人が転落して2人が亡くなりました。発注者のNEXCO西日本が設けた技術検討会は、原因・要因として「吊元部のアンカー設置不備」「吊り足場張り出し部の吊りチェーン未設置」「資材搬入計画不備」を挙げています。報道でも、足場を支えるアンカーが計画と違う位置に付けられていたことや、足場の張り出し部につりチェーンを付けていなかったこと、足場の上に荷を積みすぎていたこと(過剰積載)が原因として挙げられています。この記事では、事故の概要を事実に沿って振り返り、つり足場を使う現場で「計画どおりに組まれているか」を確かめるための点検と、元請・下請それぞれの法令上の責任を整理します。

目次

中国自動車道のつり足場落下事故の概要

何が起きたか

2025年(令和7年)1月27日、広島県廿日市市吉和の中国自動車道下り線(戸河内IC〜吉和IC・鷹の巣橋)で、床版の取り替え工事に使っていたつり足場(幅約14m・長さ約10m)が、約20mの高さから落下しました。足場の上にいた作業員5人が転落し、2人が亡くなりました。

報じられた原因と、その後の対応

発注者のNEXCO西日本が設けた技術検討会は、2026年9月10日に公表した第3回の結果で、第2回で確かめた原因・要因を「吊元部のアンカー設置不備」「吊り足場張り出し部の吊りチェーン未設置」「資材搬入計画不備」と整理しています。報道では、原因として次の3点が挙げられています。

  • アンカーの位置:足場を支えるアンカーが、計画と違う位置に付けられていた
  • つりチェーンの未設置:足場の張り出し部に、つりチェーンを付けていなかった
  • 過剰積載:足場の上に荷を積みすぎていた(日経クロステック「中国道の足場崩落に3つのミス、計画無視のアンカー施工に過剰積載」)

西日本高速道路は、約200橋の緊急点検と再発防止策を公表しました。共通しているのは、「計画どおりに組まれているか」を、組立ての途中と使う前に確かめる仕組みが働かなかった点です。

つり足場で「計画どおり」を確かめる点検

足場の支えの金具を外壁に固定した部分
足場の支えの金具を外壁に固定した部分(イメージ)

組立ての前と途中で見ること

つり足場は、上部の支点(アンカー)とつりチェーンなどで全体の重さを支えます。支点の位置や数が計画と違うと、残りの支点に荷重が集まります。組立ての前と途中では、次の点を計画の図面と照らし合わせます。

  • アンカー(上部の支点)の位置と数が、計画の図面と同じか
  • つりチェーンなどの本数と間隔が、計画の図面と同じか
  • 計画を現場で変えたときは、変えた内容を計画の作成者が確かめ、図面を直してから組んでいるか

現場の都合で支点の位置を変えることは珍しくありません。大切なのは、変えたことを「現場の判断」で終わらせず、計画を作った人の確認を通すことです。

法令で決まっている点検と資格

  • 作業主任者:つり足場の組立て・解体・変更の作業には、高さにかかわらず足場の組立て等作業主任者を選任します(労働安全衛生法施行令第6条第15号・安衛則第565条)
  • 使う日の点検:つり足場で作業を行うときは、その日の作業を始める前に、足場の部材やつり鎖などを点検します(安衛則第568条)
  • 点検する人:2023年10月から、足場の点検を行う人をあらかじめ指名することになりました
  • 特別教育:足場の組立て等の作業に就く人には、高さにかかわらず特別教育が要ります(安衛則第36条第39号)

点検の結果は記録に残し、計画との違いを見つけたら、作業を止めて直してから使います。

足場の上の荷重を管理する

資材置き場に積まれた足場の部材とフォークリフト
資材置き場に積まれた足場の部材とフォークリフト(イメージ)

中国自動車道の事故でも、足場の上の過剰積載が原因の一つとして報じられています。足場の上の荷重の管理は、どの足場でも基本です。事業者は、足場の構造と材料に応じて作業床の最大積載荷重を定め、それを超えて積んではいけません。定めた最大積載荷重は、作業する人に知らせます(安衛則第562条)。

  • 最大積載荷重を足場に表示し、朝礼などで伝える
  • 資材を1か所に集めず、置き場所を決めて分ける
  • 工程が変わって資材の量が増えるときは、事前に計画の作成者に確かめる

元請と下請の法令上の責任

労働安全衛生法と建設業法

足場で働く人を雇う事業者には、墜落などの危険を防ぐ措置をとる義務があります(労働安全衛生法第21条)。元請の事業者は、下請の作業員を含めた現場全体の安全の管理(統括安全衛生管理)にも責任を負います。建設業法では、建設業者は請け負った工事の現場に主任技術者(一定の規模以上の元請工事では監理技術者)を置き、施工の技術上の管理をさせます(建設業法第26条)。

現場監督が確かめる3つのこと

1. 計画の内容(工事の前)

足場の組立図、支点の位置、つり材の本数と荷重の考え方がそろっているか、現場の状況と合っているかを確かめます。

2. 支点とつり材(組立ての途中)

つり足場や張出し足場では、支点の位置と数、つり材の本数を、組み上がる前に立ち会って確かめます。

3. 変更の扱い(施工の期間中)

計画と違う組み方をしたときに、だれが確かめ、どう記録するかを、下請を含めて決めておきます。

つり足場の材料・構造と、計画の届出の決まり

労働安全衛生規則には、つり足場の材料と構造についての決まりもあります。報じられた原因に関わる「支点」と「つり材」を中心に整理します。

つり材と支点の強さ(安全係数)

つり足場の作業床の最大積載荷重は、つりワイヤロープとつり鋼線の安全係数が10以上、つり鎖とつりフックの安全係数が5以上、つり鋼帯とつり足場の下部・上部の支点の安全係数が鋼材で2.5以上、木材で5以上となるように定めなければなりません(安衛則第562条第2項)。支点やつり材の数が計画と違えば1か所あたりの荷重が変わるため、定めた最大積載荷重の前提から確かめ直すことになります。

使ってはいけないつり材と、構造の決まり

  • つり鎖:伸びが製造時の長さの5%を超えるもの、リンクの断面の直径の減少が製造時の10%を超えるもの、亀裂があるものは使いません(安衛則第574条第1項第2号)
  • 取り付け:つりワイヤロープやつり鎖などは、一端を足場桁やスターラップなどに、他端を突りょう・アンカーボルト・建築物のはりなどに、それぞれ確実に取り付けます(同項第5号)
  • 作業床:幅を40cm以上とし、隙間がないようにします(同項第6号。下や横に網やシートを設けるなどの措置をとるときを除く)
  • 作業の禁止:つり足場の上で、脚立やはしごなどを使って作業させてはいけません(安衛則第575条)

60日以上使うつり足場は、計画を届け出る

足場を設けるときは、その計画を工事の開始の日の30日前までに労働基準監督署長へ届け出る決まりがあります(労働安全衛生法第88条第1項。労働基準監督署長の認定を受けた事業者を除く)。足場の対象は、つり足場と張出し足場は高さにかかわらず、それ以外の足場は高さ10m以上のものです(安衛則別表第7)。組立てから解体までの期間が60日未満のものは除かれます(安衛則第85条)。届書には、組立図と配置図などを添えます(安衛則第86条・別表第7)。届け出た計画と、現場の支点とつり材の位置・数を突き合わせることが、「計画どおり」を確かめる土台になります。

出典:e-Gov 法令検索「労働安全衛生規則」(2026年10月8日確認)・e-Gov 法令検索「労働安全衛生法」(2026年10月8日確認)

あわせて読みたい

よくある質問

Q1. 中国自動車道の足場の事故はいつ、どこで起きましたか?

2025年1月27日、広島県廿日市市吉和の中国自動車道下り線(戸河内IC〜吉和IC)の鷹の巣橋で起きました。床版の取り替え工事のつり足場が約20mの高さから落下し、作業員5人が転落して2人が亡くなりました。

Q2. 事故の原因は何とされていますか?

NEXCO西日本の技術検討会は、吊元部のアンカー設置不備・吊り足場張り出し部の吊りチェーン未設置・資材搬入計画不備を原因・要因として挙げています。報道では、足場を支えるアンカーが計画と違う位置に付けられていたことや、足場の張り出し部につりチェーンを付けていなかったこと、足場の上の過剰積載が報じられています。

Q3. つり足場の組立てに資格は要りますか?

つり足場の組立て・解体・変更の作業には、高さにかかわらず足場の組立て等作業主任者の選任が要ります。作業に就く人には、足場の組立て等の特別教育が要ります。

Q4. つり足場の点検はいつ行いますか?

つり足場で作業を行う日は、その日の作業を始める前に点検します(安衛則第568条)。2023年10月からは、点検を行う人をあらかじめ指名することになりました。

Q5. 事故が起きたとき、どのような罪が問われますか?

労働安全衛生法違反のほか、死傷者が出た場合は業務上過失致死傷罪が問われることがあります。日ごろの点検の記録や、計画を変えたときの確認の記録が、何を確かめていたかを示す材料になります。

まとめ

中国自動車道のつり足場の落下事故では、アンカーの設置に不備があり、足場の張り出し部につりチェーンが付いていなかったとされています(NEXCO西日本の技術検討会)。再発を防ぐには、支点とつり材が計画どおりかを組立ての途中で確かめること、計画を変えたときは作成者の確認を通すこと、法令で決まった作業主任者の選任と使う日の点検を確実に行うことが基本です。まずは自社の現場で、つり足場の計画の図面と、実際の支点の位置と数を突き合わせるところから始めてください。

あわせて読みたい記事

工事の発注先や協力業者を探すときは、建設業許可業者データベースで許可業種と所在地から確認できます。許可の有無と業種は、見積依頼の前に必ず確かめておきたい項目です。

出典:NEXCO西日本(技術検討会 第3回の結果・2026年9月10日)・日本経済新聞(中国道の足場落下事故)・日経クロステック(事故の原因)・労働安全衛生法(e-Gov 法令検索)・労働安全衛生規則(e-Gov 法令検索)・建設業法(e-Gov 法令検索)(確認日 2026-10-06)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

元請や施主は、まず会社名で検索して会社概要のページを見ます。会社名で検索されたときの会社概要ページ|工務店が整える5つ

登録しなくても​使えます:補助金の​締切​カレンダー⁠(PDF・CSV)・​見積書と​工程表の​ひな形⁠(Excel・Word)・​見学会の​チラシの​テンプレート⁠(PDF・Word)。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

建設業許可(一般・特定)の新規取得・更新・業種追加から変更届・廃業届まで幅広い申請実務に精通した許可申請の専門家。国土交通省の法改正情報を継続的に追跡し、都道府県ごとの審査基準の違いや落とし穴を解説。経営事項審査(経審)・入札参加資格・財産的基礎要件の確認方法など、中小建設会社が直面する許可維持の課題に対応した情報を提供している。

目次