2026年1〜5月の塗装・防水工事業の倒産は80件(帝国データバンク)に達し、業界全体に危機感が広がっています。塗装工事業の倒産には、中東情勢の不安定化によるナフサ価格の高騰や慢性的な人材不足など、複合的な要因が重なっているとみられます。帝国データバンクの調査によれば、このペースで推移すれば年間倒産件数が過去最多を更新する可能性があるとされています。本記事では、塗装・防水工事業が直面する経営課題の実態を整理し、原材料費高騰への対策、人材確保の具体策、廃棄物処理の適正化、そして顧客トラブル防止策まで、経営安定に向けた実践的な対策を解説します。
塗装工事業の倒産の実態と主要原因
2026年1〜5月で塗装・防水 80件(帝国データバンク)という厳しい状況
塗装・防水工事業の倒産件数は、2026年1月から5月までの5カ月間で既に80件に達しました。この数字は前年同期(87件)より少ないものの、年間では過去最多を更新する可能性も指摘されています(帝国データバンク)。塗装工事業の倒産では「販売不振」が主な原因になることが多い傾向があり、その背景には原材料費の高騰による利益率の低下も影響しているとみられます。
受注件数の減少に加えて、1件あたりの利益額が縮小し、固定費を賄えなくなることが経営を苦しめます。運転資金の確保は、会社の規模を問わず大切です。
ナフサ価格高騰が原材料費を直撃
塗装工事業の経営を圧迫する最大の要因が、ナフサ価格の高騰です。ナフサは塗料の主要原料であり、中東情勢の不安定化により供給が不安定になっています。ナフサ価格の上昇は、塗料価格の値上げに直結します。
多くの塗装工事業者は、既に受注済みの案件については契約時の見積価格で工事を完了させる必要があり、原材料費の高騰分を自社で吸収せざるを得ません。結果として、工事を行えば行うほど赤字が拡大するという悪循環に陥っています。特に公共工事では価格転嫁が難しく、民間工事においても競争の激しさから値上げ交渉が困難な状況が続いています。
原材料費高騰への実践的対策とナフサ価格への対応

見積戦略の見直しと価格転嫁の交渉術
原材料費高騰に対応するには、まず見積戦略の根本的な見直しが必要です。従来のように過去の実績ベースで見積を作成するのではなく、発注時点での最新の原材料価格を反映させる仕組みを構築しましょう。具体的には、見積書に「原材料価格の変動が一定率を超えた場合は価格改定を協議する」という条項を明記することが有効です。
また、顧客への価格転嫁交渉においては、単に「値上げをお願いします」ではなく、ナフサ価格の推移グラフや塗料メーカーからの値上げ通知書などの客観的資料を提示することで、理解を得やすくなります。特に長期取引のある顧客に対しては、原価構造を透明化し、適正利益の確保が継続的なサービス提供の前提であることを丁寧に説明することが重要です。
材料調達の多様化とコスト管理の徹底
ナフサ価格・原材料費高騰対策として、材料調達先の多様化も効果的です。特定のメーカーや商社に依存するのではなく、複数の仕入れルートを確保することで、価格交渉力を高めることができます。また、在庫管理システムを導入し、必要最小限の在庫で運営することで、資金繰りの改善にもつながります。
さらに、工事ごとの原価管理を徹底することが不可欠です。材料費、人件費、外注費、諸経費を項目別に記録し、どの工事が利益を生んでいるのか、どの工種で赤字が発生しているのかを可視化しましょう。デジタルツールを活用した原価管理システムを導入すれば、リアルタイムで収支状況を把握でき、早期の経営判断が可能になります。
人材不足への対応策|外国人雇用と技術継承の両立
特定技能制度を活用した外国人労働者の受け入れ
塗装工事業界では、技能者の高齢化と若手入職者の減少により、深刻な人材不足が続いています。この課題への現実的な解決策の一つが、外国人雇用です。特に「特定技能1号」の在留資格を持つ外国人労働者の受け入れは、即戦力となる人材を確保する有効な手段となっています。
特定技能1号は、2019年4月に創設された在留資格で、建設分野では塗装を含む複数の職種が対象となっています。技能実習生とは異なり、転職も可能であるため、より柔軟な雇用形態を選択できます。受け入れにあたっては、建設業特定技能受入計画の認定を受ける必要がありますが、国土交通省の支援制度を活用すれば、手続きのサポートを受けることができます。
CAD技術導入による生産性向上と技術継承
人材不足・外国人雇用と並行して取り組むべきなのが、デジタル技術を活用した生産性向上です。塗装工事においても、CADシステムを活用することで、施工計画の精度向上や工期短縮が可能になります。特に大規模な建築物の塗装工事では、3DCADで足場計画や塗装範囲を可視化することで、材料の無駄を削減し、作業効率を大幅に改善できます。
また、ベテラン技能者のノウハウをデジタル化して記録することも重要です。作業手順を動画で撮影してマニュアル化したり、施工ポイントをチェックリスト化したりすることで、外国人労働者や若手技能者への技術継承がスムーズになります。人材確保と技術継承を両立させる仕組みづくりが、長期的な経営安定につながります。
建設廃棄物処理とコンプライアンス強化による信頼獲得

塗装廃棄物の適正処理とリサイクル義務への対応
塗装工事でも適正な処理が求められています。塗装工事で発生する廃棄物には、廃塗料、塗料缶、養生シート、研磨くずなどがあり、これらは産業廃棄物として適切に処理しなければなりません。
廃棄物処理法のマニフェスト制度により、排出事業者(元請業者)は最終処分の完了まで確かめる義務があります(引渡完了報告は青森県など一部の地域の制度です)。この義務を怠ると、廃棄物処理法の罰則や行政処分の対象になることがあります。そのため、マニフェスト制度を正確に運用し、廃棄物処理業者との契約内容を定期的に見直すことが重要です。
また、自治体や業界団体の取り組みに参加することで、適正処理のノウハウを得られることもあります。
顧客詐欺対策とコンプライアンス体制の整備
建設業でも、工事代金や前払金をだまし取られる詐欺のトラブルが起きています。塗装工事においても、不要な工事を持ちかける悪質業者の存在や、過剰な値引きによる手抜き工事など、顧客詐欺対策が経営課題となっています。
自社の信頼性を高めるためには、まず適正な見積書と契約書の作成が基本です。工事内容、使用材料、工期、保証内容を明確に記載し、顧客が納得した上で契約を締結する体制を整えましょう。また、施工中の写真記録を残し、完了後には報告書として提出することで、透明性の高い施工体制をアピールできます。
さらに、従業員へのコンプライアンス教育も欠かせません。建設業法、労働安全衛生法、廃棄物処理法などの関連法規を定期的に研修し、法令遵守の意識を組織全体で共有することが、長期的な信頼構築につながります。
よくある質問
Q1. 塗装工事業の倒産が増えている主な原因は何ですか?
人件費高騰、原材料価格の上昇、受注単価の低迷が主因です。特に下請け中心の事業構造では元請けからの価格転嫁が困難で、利益率が圧迫されています。加えて職人不足による工期遅延や、天候不順による売上減少も経営を悪化させる要因となっています。
Q2. 倒産を回避するために今すぐ取り組むべき対策は?
まず収支の可視化とキャッシュフロー管理の徹底が必要です。赤字案件の見極めと受注基準の明確化、適正な見積作成を行いましょう。金融機関との関係強化、補助金・助成金の活用、不採算事業の整理も重要です。早期の経営改善計画策定が倒産回避の鍵となります。
Q3. 防水工事業で収益性を改善する具体的な方法を教えてください
元請け比率を高めることで中間マージンを削減し、利益率向上を図れます。定期メンテナンス契約による安定収益の確保、高付加価値工法の導入、自社ブランドの確立が有効です。また見積精度を上げ、適正価格での受注を徹底することで不採算案件を削減できます。
Q4. 資金繰り悪化の兆候とその対処法は?
入金サイトと支払サイトの逆転、手形決済の増加、銀行借入の返済遅延が危険信号です。対処法として売掛金の早期回収交渉、支払条件の見直し、ファクタリング活用による即時資金化を検討しましょう。月次での資金繰り表作成と3ヶ月先までの予測管理が必須です。
Q5. 小規模塗装会社が生き残るための差別化戦略は?
地域密着型の営業で顧客との信頼関係を構築し、リピート率を高めることが重要です。専門特化(マンション大規模修繕、文化財保護等)による技術優位性の確立、デジタルマーケティングでの集客強化、アフターサービスの充実で他社との差別化を図りましょう。
まとめ

塗装工事業の倒産原因は、ナフサ価格高騰による原材料費の上昇や人材不足など、複合的な要因が重なっています。経営安定のためには、第一に見積戦略の見直しと価格転嫁交渉による適正利益の確保、第二に特定技能制度やCAD技術導入による人材確保と生産性向上、第三に廃棄物の適正処理とコンプライアンス体制の強化による信頼獲得という3つの柱が不可欠です。これらの対策は一朝一夕には実現できませんが、できることから着実に取り組むことで、厳しい経営環境でも生き残る強い組織を構築できます。まずは自社の原価管理体制を見直し、どの工事で利益が出ているのかを可視化することから始めましょう。
工事を頼む先や協力会社を探すときは、全国の塗装工事業の許可業者を都道府県別に調べられる塗装工事業の許可業者一覧もお使いください。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」・労働安全衛生法(e-Gov 法令検索)・廃棄物処理法(e-Gov 法令検索)(確認日 2026-10-02)・帝国データバンク「塗装・防水工事の倒産動向(2026年1-5月)」・帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」(確認日 2026-10-19)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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