解体工事業の​許可と​財産的基礎|​500万円の​基準と​無許可のリスク

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机に並べた一万円札と通帳と電卓

解体工事を請け負う会社にとって、建設業許可の「財産的基礎」は、許可を取るときに必ず確かめられる要件の一つです。500万円の基準をどう満たすか、残高証明書で足りるのか、赤字の決算だとどうなるのかを誤解したまま準備を進めると、申請の直前で手が止まります。この記事では、解体工事業の許可を取るときの財産的基礎の中身と証明の方法、許可が要らない小さな解体工事との境目、無許可で請け負ったときのリスクを、経営者の目線で順に整理します。

目次

解体工事に建設業許可が要る場面と、無許可営業のリスク

500万円以上の解体工事には解体工事業の許可が要る

解体工事業は2016年(平成28年)6月1日から、とび・土工・コンクリート工事から分かれた独立の業種になりました。それまでとび・土工工事業の許可で解体工事を請け負っていた業者も、経過措置が2019年5月末で終わったため、いまは解体工事業の許可が要ります。

許可が要るのは、1件の請負代金が500万円以上(消費税を含む)の解体工事です。500万円未満の解体工事だけを請け負う場合は建設業許可は要りませんが、建設リサイクル法により、工事を行う都道府県ごとに「解体工事業の登録」が要ります(土木工事業・建築工事業・解体工事業の許可を持っていれば登録は要りません)。

無許可で請け負ったときの罰則

許可が要る金額の解体工事を許可なしで請け負うと、建設業法違反になります。

  • 刑事罰: 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(建設業法第47条・2025年6月から懲役は拘禁刑)。法人には1億円以下の罰金もあります(第53条)
  • 行政処分: 許可を持たずに建設業を営む者にも、営業の停止が命じられることがあります(大阪・関西万博の海外パビリオンの工事では、無許可で請け負った会社が大阪府から営業停止の処分を受けました)
  • この先の許可: 建設業法違反で罰金の刑を受けると、5年間は許可を受けられない欠格の事由に当たることがあります(第8条)
  • 取引: 元請や発注者から、許可の有無を確かめられて取引を断られることがあります

許可が要る金額かどうかは、契約を分けても1件の工事として判断されます。迷う規模の工事が見えてきたら、先に許可の準備を始めておくのが安全です。

建設業許可の「財産的基礎」とは何か

重機でコンクリートを砕く解体の現場
重機でコンクリートを砕く解体の現場(イメージ)

一般建設業は3つのうち1つを満たせばよい

財産的基礎は、請け負った工事をやり遂げるだけのお金の裏付けがあるかを見る要件です(建設業法第7条第4号)。一般建設業では、次のどれか1つを満たせば足ります。

  • 自己資本が500万円以上: 直前の決算の貸借対照表の純資産の合計(個人は期首資本金などから計算)
  • 500万円以上の資金を調達する能力: 金融機関の預金残高証明書や融資証明書で示します
  • 許可を受けて継続して5年以上営業した実績: 更新のときに使える基準です

つまり、決算の自己資本が500万円に届かなくても、申請の前に口座に500万円以上を用意して預金残高証明書を取れば、財産的基礎を満たせます。残高証明書の基準日は「申請の直前1か月以内」などと都道府県ごとに決まっているため、申請先の手引きで確かめてから取得してください。

特定建設業はより厳しい4つの基準

元請として、1件の工事で下請に出す代金の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる場合は特定建設業の許可が要り、財産的基礎の基準も厳しくなります。

区分財産的基礎の基準対象となる下請契約
一般建設業自己資本500万円以上・500万円以上の資金調達能力・5年以上の許可の営業のどれか元請として下請に出す代金の合計が5,000万円未満(建築一式工事は8,000万円未満)
特定建設業欠損の額が資本金の20%以下・流動比率75%以上・資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上のすべて元請として下請に出す代金の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)

特定建設業の基準は、許可の申請の直前の決算で判断し、更新のときも確かめられます。下請として工事を受けるだけなら、請負の金額が大きくても一般建設業の許可で足ります。

財産的基礎を証明する書類と準備の順番

自己資本で示すとき

法人は直前の決算の財務諸表(貸借対照表など)で、純資産の合計が500万円以上あることを示します。新しく設立した法人で決算がまだ無い場合は、設立のときの開始貸借対照表で示します。資本金500万円以上で設立した法人は、この形で満たせることが多くあります。

残高証明書や融資証明書で示すとき

自己資本が500万円に届かない場合は、金融機関が出す預金残高証明書(500万円以上)か、融資証明書を使います。複数の口座を合わせて500万円以上にする場合は、同じ基準日の証明書をそろえる必要がある県が多いため、申請先の手引きで確かめてください。

申請までの流れ

黄色い手袋でフルハーネスのフックを持つ手元
黄色い手袋でフルハーネスのフックを持つ手元(イメージ)
  1. 申請先の手引きを読む: 都道府県の建設業許可の手引きで、財産的基礎の証明書類と残高証明書の基準日を確かめます
  2. ほかの要件を確かめる: 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)、営業所技術者等(2024年12月から専任技術者の呼び名が変わりました)、社会保険の加入など、財産的基礎のほかの要件もそろうかを確かめます
  3. 証明書類を取る: 決算書類か、基準日に合わせた残高証明書を取得します
  4. 申請する: 審査の標準処理期間は、知事許可でおおむね30日前後(都道府県ごとに決まっています)です

書類をそろえる期間を含めると、許可が出るまで2〜3か月ほど見ておくと安心です。500万円以上の解体工事の受注が見えてきた段階で準備を始めてください。

財産的基礎が足りないときの考え方

決算が赤字で自己資本が500万円に届かない場合

赤字が続いて純資産が500万円に届かなくても、一般建設業なら、申請の前に500万円以上の預金残高証明書を取れば財産的基礎を満たせます。決算の数字を無理に動かす必要はありません。増資で自己資本を増やす方法もありますが、増資の後の決算や開始貸借対照表で示す形になるため、時期を税理士と相談してください。

許可を取った後に基準を下回ったら

一般建設業は、許可を取った後に自己資本が500万円を下回っても、それだけで許可が取り消されることはありません。更新のときは「5年以上の許可の営業」の基準で財産的基礎を満たせます。一方、特定建設業は更新のときにも4つの基準を確かめられるため、決算のたびに数字を確かめておくことが大切です。

よくある質問

産業廃棄物を詰めたトン袋
産業廃棄物を詰めたトン袋(イメージ)

Q1. 解体工事を行うには建設業許可は必須ですか?

1件の請負代金が500万円以上(消費税を含む)の解体工事には、解体工事業の許可が要ります。500万円未満の解体工事だけなら許可は要りませんが、工事を行う都道府県ごとに建設リサイクル法の解体工事業の登録が要ります。

Q2. 一般建設業の財産的基礎の金額基準は?

自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力(預金残高証明書や融資証明書)、許可を受けて5年以上継続して営業した実績、のどれか1つです。特定建設業は、欠損の額が資本金の20%以下・流動比率75%以上・資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上のすべてが要ります。

Q3. 許可を取る前に500万円以上の解体工事を受注したらどうなりますか?

無許可営業として建設業法違反になり、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象です。罰金の刑を受けると、5年間は許可を受けられなくなることもあります。許可が出てから契約してください。

Q4. 預金が500万円あれば財産的基礎を満たせますか?

一般建設業なら、金融機関の500万円以上の預金残高証明書で満たせます。通帳の写しではなく、金融機関が出す残高証明書が要ります。基準日の決まりは都道府県ごとに違うため、申請先の手引きで確かめてください。

Q5. 財産的基礎が足りない場合はどうすればよいですか?

まず、500万円以上の預金残高証明書を用意できるかを確かめてください。難しい場合は、金融機関の融資証明書や増資も選べます。どの方法が自社に合うかは、申請先の窓口や行政書士・税理士に相談すると確実です。

まとめ

500万円以上の解体工事を請け負うには、解体工事業の許可が要ります。一般建設業の財産的基礎は、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、5年以上の許可の営業のどれか1つで満たせ、決算が赤字でも預金残高証明書で示せます。特定建設業は4つの基準をすべて満たす必要があり、更新のときにも確かめられます。まずは申請先の都道府県の手引きで、証明書類と残高証明書の基準日を確かめるところから始めてください。

出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」・国土交通省 北陸地方整備局「建設業法等の改正」(解体工事業の新設)・建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(e-Gov 法令検索)・国土交通省「許可の要件」(確認日 2026-10-06)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

工事を頼む先や協力会社を探すときは、全国の解体工事業の許可業者を都道府県別に調べられる解体工事業の許可業者一覧もお使いください。

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この記事を書いた人

建設業許可(一般・特定)の新規取得・更新・業種追加から変更届・廃業届まで幅広い申請実務に精通した許可申請の専門家。国土交通省の法改正情報を継続的に追跡し、都道府県ごとの審査基準の違いや落とし穴を解説。経営事項審査(経審)・入札参加資格・財産的基礎要件の確認方法など、中小建設会社が直面する許可維持の課題に対応した情報を提供している。

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