建設業許可の​『誠実性の要件』|​違反の​型から​学ぶ個人事業主の注意点

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洗濯ばさみで留めた「違法」「合法」の札

建設業許可申請を検討している個人事業主の皆様へ。許可取得に必要な「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」「営業所技術者」については積極的に準備されますが、見落とされやすいのが「誠実性の要件」です。誠実性は、よく似た「欠格要件」と混同されがちです。本記事では、誠実性の要件と欠格要件の違い、許可の取消しや営業停止につながる違反の型をもとに、個人事業主が申請前・申請後に確認すべき実務ポイントを解説します。

目次

建設業法における『誠実性要件』とは何か

書類の前で印鑑を持つ手元と朱肉とペン
書類の前で印鑑を持つ手元と朱肉とペン(イメージ)

許可申請で問われる誠実性の定義

建設業許可申請の要件として、建設業法第7条第3号は「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」を求めています。これが誠実性の要件です。

  • 不正な行為:請負契約の締結や履行のときの詐欺・脅迫・横領など、法律に違反する行為
  • 不誠実な行為:工事の内容・工期・天災などの損害の負担について、請負契約に違反する行為
  • 対象になる人:個人事業主の場合は本人と支配人、法人の場合は法人と役員等・令第3条の使用人(支店長など)

なお、「拘禁刑以上の刑(2025年6月より前の懲役・禁錮を含む)に処せられ、その刑の執行を終わった日(または執行を受けることがなくなった日)から5年を経過しない」「申請書に虚偽の記載がある」などは、誠実性ではなく欠格要件(建設業法第8条)の話です。どちらかに当たると許可は受けられません。

誠実性要件が問われる背景―建設業界の信用維持

建設業界は、社会的インフラの構築に関わる重要な産業です。建設業法が誠実性を厳格に要求する背景には、不適切な施工や欠陥工事による消費者被害を防止する目的があります。

許可を受けた後も、請負契約に関する不誠実な行為は、指示処分や営業停止、情状が重ければ許可の取消しの対象になります(建設業法第28条・第29条)。国や都道府県の処分は、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で公表されます。

処分につながる違反の型

机の上の真ちゅうの天秤と奥の書類
机の上の真ちゅうの天秤と奥の書類(イメージ)

無許可営業(建設業法第3条)

許可が必要な工事(建築一式工事は1件 1,500万円以上で延べ面積150㎡未満の木造住宅を除く、そのほかの工事は1件 500万円以上・どちらも税込)を、許可を受けずに請け負うと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象です(第47条・2025年6月から懲役は拘禁刑)。罰金以上の刑を受けると、その後5年は欠格要件に当たり、許可を受けられません(第8条)。

「許可が必要な工事と不要な工事の区分を正確に理解する」ことが、個人事業主にとっての第一歩です。

下請代金の支払いの遅れ

元請として下請に出した工事の代金は、注文者から支払いを受けた日から1か月以内に払う必要があります(第24条の3)。特定建設業者は、下請から引渡しの申出を受けた日から50日以内です(第24条の6)。支払の期限の違反は、国土交通大臣や知事が公正取引委員会に措置を求める対象です(第42条)。特定建設業者は、第41条の勧告に従わないと指示の対象になります。

個人事業主の場合、法人と異なり「個人信用」と「事業信用」が一体です。下請代金の遅れは、単なる民事上のトラブルでは済みません。

個人事業主が申請前に確認すべき誠実性チェックリスト

作業着の人が青いクリップボードに書き込む手元
作業着の人が青いクリップボードに書き込む手元(イメージ)

欠格要件と過去の処分の確認

申請のときは、欠格要件に当たらないことを誓約書で誓約します。個人事業主は、次の項目を必ず確認してください。

  • 建設業の許可の取消し ―不正な手段での取得や営業停止の違反などで取り消されてから5年を経過していないか(第8条)
  • 刑罰 ―拘禁刑以上の刑(2025年6月より前の懲役・禁錮を含む)(罪の種類を問わない)、または建設業法や一部の法令(暴力団対策法・労働基準法の一部の条文など)違反の罰金刑を受け、執行を終わるなどしてから5年を経過していないか
  • 営業停止の期間中でないか
  • 社会保険 ―健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入は、欠格ではなく別の許可要件(2020年から)

当てはまるかどうか迷う場合は、申請先の都道府県の窓口に事前に相談してください。

経営業務の管理責任者等・技術者の確認

建設業許可申請では、「経営業務の管理責任者等」と「営業所技術者」(2024年12月までの名前は専任技術者)として置く人が要件を満たしているかも確かめられます。

個人事業主の場合、本人が経営業務の管理責任者を兼ねることが一般的ですが、営業所技術者として他の従業員を置く場合は、その人の資格や経験も確認の対象になります。特に以下の点に注意が必要です。

  • 技術者として配置予定の者が、過去に建設業法違反で処分を受けていないか
  • 技術者の資格や実務経験を証明する書類がそろっているか(施工管理技士の合格は期限なく有効。監理技術者資格者証は5年ごとの更新)
  • 技術者が他の建設業者と「営業所技術者」の重複配置されていないか(二重配置は違反)

特に「二重配置」は見落とされやすい違反です。複数の企業で同時に営業所技術者(2024年12月12日までの呼び名は専任技術者)として働くことは建設業法で禁止されているため、個人事業主が技術者を採用する際は、その者の他社での従事状況を必ず確認してください。

許可取得後に誠実性を損なわないための実務ポイント

工事契約書の作成と下請代金支払いルールの確立

許可取得後に気をつけたいのが「下請代金の遅延・不払い」です。前述のとおり、元請は注文者から支払いを受けた日から1か月以内(第24条の3)、特定建設業者は引渡しの申出から50日以内(第24条の6)に払う必要があります。

個人事業主が実践すべき対策は、以下の通りです。

  • 工事契約書の書面化 ―すべての工事について、契約金額、工期、支払期日を明記した書面を交わす
  • 下請代金支払い台帳の作成 ―毎月の支払い予定を管理し、支払い実績を記録する
  • 支払い遅延時の対応マニュアル化 ―やむを得ず支払いが遅れる場合は、下請業者に事前通知する体制を構築する

実務では、個人事業主が手元資金の不足で下請代金支払いを後回しにするケースが散見されます。しかし建設業法上は「資金繰りが悪い」という事情は一切考慮されません。むしろ、支払い能力を超える工事受注をした時点で違反の責任は申請者本人にあります。

安全管理と労務管理体制の整備

建設業許可取得後、許可申請時の誠実性を維持するためには、日常的な安全管理と労務管理が不可欠です。

個人事業主が特に注意すべき項目は以下の通りです。

  • 労働安全衛生法に基づく安全教育の実施 ―作業員に対する定期的な安全教育を実施し、記録を保存する
  • 労務管理の適正化 ―給与、社会保険、雇用契約を適切に管理し、未払いや違法就労を生じさせない
  • 工事現場での法令順守 ―建築基準法、労働基準法に違反する施工指示を出さない

これらは誠実性の要件そのものではありませんが、労働基準法や労働安全衛生法の違反で罰金以上の刑を受けると、欠格要件に当たることがあります。安全と労務の管理は、許可を守る土台です。

許可申請時に虚偽記載があった場合のリスク

申請書の虚偽記載と許可取り消し

申請書や添付書類の重要な事項に虚偽の記載があると、許可は受けられません(第8条)。不正な手段で許可を受けたことが分かれば許可は取り消され(第29条)、取消しから5年は許可を受けられません。虚偽の記載そのものも、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(第50条)。

起こりうる例(想定の例)は次のとおりです。

想定の例1:過去5年の行政処分を隠していた場合

発覚すれば許可は取り消されます。取消しは過去にさかのぼるものではなく、取消しの前に契約した工事は続けられますが(第29条の3)、注文者に2週間以内に通知が要り、新しい受注はできなくなります。

想定の例2:経営業務の管理責任者等の要件を偽って記載していた場合

経営業務の管理責任者等として置いた人が要件を満たしていなかった場合、不正な手段による許可として取り消しの対象になります(第29条)。

このリスクを避けるためには、申請書類作成時に第三者(行政書士や建設業許可コンサルタント)による確認を受けることを強く推奨します。

許可取り消し後の事業継続上の問題

許可が取り消された場合、個人事業主が直面する問題は以下の通りです。

  • 新規許可申請の不可 ―取り消しから5年間は新規許可申請ができない
  • 新しい受注の停止 ―取消し後は、許可が必要な規模の工事を新しく受注できない(取消し前に契約した工事は、注文者への通知のうえで続けられる)
  • 信用失墜 ―処分は国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で公表され、協力企業や発注者からの信頼が失われる

これらのリスクは、事業継続に直結する重大な問題です。単に「許可が取れればいい」ではなく、「許可取得後も継続的に法令を遵守する体制」を申請段階から構築することが不可欠なのです。

誠実性要件で許可申請が不適切と判断される具体的な基準

欠格事由に該当するケース

建設業法第8条では「欠格要件」を定めており、これらに該当すると許可は受けられません。個人事業主が特に注意すべき欠格事由は以下の通りです。

  1. 拘禁刑以上の刑(2025年6月より前の懲役・禁錮を含む)に処せられ、その刑の執行を終わった日(または執行を受けることがなくなった日)から5年を経過していない

罪の種類を問わず、拘禁刑以上の刑(2025年6月より前の懲役・禁錮を含む)に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者は、許可を受けられません。

  1. 建設業の許可を取り消されてから5年を経過していない

不正な手段による取得や営業停止の違反などで許可を取り消された場合、取消しの日から5年は許可を受けられません。営業停止を命じられ、その期間が終わっていない場合も同じです。

よくある質問

Q1. 建設業許可申請で『誠実性』が求められるのはなぜですか?

請負契約は金額が大きく、工事の途中で内容や工期が変わることも多いため、契約を守れない事業者に許可を与えないための要件です。請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな場合、許可は受けられません(第7条第3号)。

Q2. 個人事業主が誠実性で引っかかりやすいのは、どんな場合ですか?

誠実性で問われるのは、請負契約に関する不正(詐欺・横領など)や不誠実な行為(契約違反)です。建築士法や宅地建物取引業法で不正・不誠実な行為をして免許を取り消され、5年を経過しない場合も当たります。社会保険の未加入は誠実性ではなく別の許可要件、申請書の虚偽記載は欠格要件の問題です。

Q3. 過去の労働基準法違反が誠実性に影響しますか?

是正勧告を受けただけでは、誠実性の要件や欠格要件には当たりません。ただし、労働基準法の一部の条文(強制労働の禁止など)の違反で罰金刑を受けた場合や、拘禁刑以上の刑(2025年6月より前の懲役・禁錮を含む)を受けた場合は、5年間は欠格要件に当たります(第8条)。

Q4. 許可申請時に虚偽記載したら誠実性でどうなりますか?

許可申請書などの重要な事項に虚偽の記載があると、建設業法第8条により許可を拒否される理由になります(誠実性の要件とは別の決まり)。うその申請で許可を受けた場合は、許可の取消しの対象です(第29条)。また、虚偽の記載は建設業法第50条により、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(2025年6月から懲役は拘禁刑)。申請書は正確に記載し、不明な点は事前に行政窓口に相談することが重要です。

Q5. 誠実性の要件で許可が下りなかった場合、再申請できますか?

再申請はできますが、許可が下りなかった理由が解消している必要があります。欠格要件に当たる場合は、決められた期間(多くは5年)が過ぎるまで許可を受けられません。申請先の都道府県の窓口で、理由と再申請の時期を確かめましょう。

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    出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)
    この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

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    この記事を書いた人

    建設業許可(一般・特定)の新規取得・更新・業種追加から変更届・廃業届まで幅広い申請実務に精通した許可申請の専門家。国土交通省の法改正情報を継続的に追跡し、都道府県ごとの審査基準の違いや落とし穴を解説。経営事項審査(経審)・入札参加資格・財産的基礎要件の確認方法など、中小建設会社が直面する許可維持の課題に対応した情報を提供している。

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