営業所技術者(2024年12月までの呼び名は専任技術者)が急に退職する——建設業許可を持つ中小建設会社の経営者にとって、いちばん避けたい事態の一つです。営業所技術者は許可の要件そのものなので、後任がいない日が生じると、許可を取り消される理由になります。本記事では、建設業法の条文に沿って、退職が分かった直後から経営者が取るべき3つの対処法を解説します。
営業所技術者が退職すると何が起きるか【2026年版】
建設業法第7条第2号は、許可を受けた営業所ごとに営業所技術者を置くことを許可の基準にしています。営業所技術者が営業所に置かれなくなり、後任を置いたときは、2週間以内に後任についての書類を許可行政庁へ出します(建設業法第11条第4項)。後任がおらず基準を満たさなくなったときも、2週間以内にその旨を届け出なければなりません(同条第5項)。
| 状況 | 法律上どうなるか |
|---|---|
| 退職と同時に後任を置き、2週間以内に届け出た | 許可の基準を満たしたまま(許可は続く) |
| 後任がいないまま届け出た | 許可の基準(第7条第2号)を満たさない状態=国土交通大臣・知事は許可を取り消さなければならない(第29条第1項第1号) |
| 書類や届出を出さなかった・事実と違う内容で出した | 罰則の対象(6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金・第50条) |
| 基準を満たさないことで許可を取り消された | 500万円以上(消費税込み。建築一式は1,500万円以上で、延べ面積150㎡未満の木造住宅を除く)の工事を新しく請け負えなくなる。ただし、この理由での取消しは5年の欠格(第8条)には当たらないため、基準をそろえれば新しく申請できる |
法律には「後任が見つかるまで◯か月は待つ」という猶予の決まりはありません。後任を置けない日が出ないように、退職が分かった日から動くことが、許可を守るいちばん確かな方法です。
対処法1:社内の別の技術者で要件を満たせないか確認する

最初にやるべきことは、社内に営業所技術者の要件を満たす別の人がいないかを急いで確かめることです。許可の申請のときに届け出た人のほかにも、要件を満たす社員がいることがあります。
確認すべき資格・実務経験の要件
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 国家資格の保有者 | 施工管理技士(1級・2級)、建築士、技術士など。業種ごとに認められる資格が決まっているため、資格証の写しを集めて業種と照らす |
| 実務経験年数 | 許可を受けた業種の工事に10年以上(指定学科を卒業した人は3〜5年)の実務経験があるか |
| 常勤であること | その営業所に毎日通って勤めていること。他社の技術者や、他の営業所の技術者との掛け持ちはできない |
| 同じ営業所での複数業種 | 要件を満たしていれば、1人が同じ営業所の複数の業種の営業所技術者を兼ねられる |
「資格を持っているが、営業所技術者として届け出ていなかった社員」が社内にいることがあります。全社員の資格証と職歴を、今すぐ洗い出してください。
兼任・営業所の統合も検討する
複数の営業所を持つ会社では、他の営業所の技術者を異動させる方法もあります。ただし、異動させた営業所に後任がいなくなれば、そちらの営業所が基準を満たさなくなります。営業所を廃止して技術者を集める方法を含め、行政書士や許可行政庁の窓口と相談して決めてください。
対処法2:採用または出向受け入れで外部から確保する

社内に要件を満たす人がいない場合は、外部からの採用か出向の受け入れで営業所技術者を確保します。
採用のポイント
- 許可を受けている業種で認められる資格(施工管理技士など)を持つ人を優先して募集する
- 入社の日から常勤であることを示す書類(健康保険の資格を確かめる書類など)をそろえられるようにしておく
- 退職の日より前に後任の入社が決まるのが理想。間に合わないと分かった時点で、許可行政庁の窓口に相談する
出向受け入れの活用
グループ会社・関連会社などからの出向者も、出向先の営業所に常勤していれば営業所技術者になれます。出向元との雇用関係が残る在籍出向でも差し支えありませんが、出向元でも勤める掛け持ちはできません。出向の契約書や、出向先で常勤していることを示す書類が求められるため、どの書類で確かめるかを先に窓口へ聞いておくと確実です。
後任が間に合わないと分かったとき
後任が間に合わないと分かったら、退職の日を待たずに許可行政庁の窓口へ相談してください。後任のいない状態は、法律上は許可を取り消さなければならない理由に当たります(第29条第1項第1号)。窓口が待ってくれる決まりはないため、「届出だけしておけば猶予がある」とは考えないでください。なお、許可を取り消されても、その前に結んだ請負契約の工事は続けて施工できます(第29条の3第1項)。ただし取消しから2週間以内に注文者へその旨を知らせる義務があり、注文者は30日以内なら契約を解除できます(同条第5項)。
対処法3:一部業種の廃業届を出して残りの許可を守る

複数の業種の許可を持っている会社では、退職した技術者だけが担っていた業種を廃業の届出(一部廃業)で整理し、後任のいる業種の許可を確実に残す方法があります。建設業の一部を廃止したときは、30日以内に届け出ます(建設業法第12条)。
| 状況 | 考えられる対処 |
|---|---|
| 退職した技術者が担っていた業種が売上の大半 | 対処法1・2を優先して、後任の確保を急ぐ |
| 退職した技術者が担っていた業種が売上のごく一部 | その業種の廃業を届け出て、他の業種の許可を確実に残す |
| 全業種の営業所技術者が1人だけだった | 対処法1・2を最優先。間に合わない場合に備え、取消し後の新しい申請の準備も窓口に相談する |
一部廃業した業種は、後で要件をそろえて業種追加の申請をすれば取り直せます。許可全体を危うくするより、業種を一時的に減らして残りの許可を守るほうが経営上よい場合もあります。
退職が分かった直後の行動リスト
退職の申し出を受けた日から動き始めてください。
- 1〜2日目:社内の資格保有者・実務経験者を全員洗い出す(対処法1)
- 1〜3日目:建設業に詳しい行政書士に相談する(状況の整理・方針決め)
- 3〜7日目:社内に後任がいなければ、採用・出向の手続きを始める(対処法2)
- 後任が間に合わないと分かった時点:許可行政庁の窓口に相談する(一部廃業か、取消し後の新しい申請かを含めて)
- 退職・交代から2週間以内:届出を必ず出す(後任がいるときは第11条第4項・いないときは同条第5項)
→ 許可の更新期限が迫っている場合は特に急ぎます。「建設業許可の更新期限を1日でも過ぎたらどうなるか」も合わせて確認してください。
まとめ
- 営業所技術者がいない状態は、許可の取消しの理由になる。法律に「〇か月待つ」という猶予はないため、退職の日までに後任を置くことを目指す。届出は2週間以内。
- 対処の順番は「社内の確認→外部からの採用・出向→一部廃業」。社内に資格保有者がいれば最も早く解決できる。日ごろから技術者の資格と職歴の一覧を整えておくのが最善策。
- 基準を欠いたことによる取消しは5年の欠格には当たらない。万一取り消されても、要件をそろえれば新しく申請できる。ただし営業できない期間が生じるため、取消しにならない備えが先。
今すぐできる次のアクション
- 全社員の資格証の写しを集める。施工管理技士・建築士・技術士などの有資格者が社内に何人いて、どの業種に当てられるかを一覧にします。
- 営業所技術者が1人しかいない業種を確かめる。その業種について、後任の候補・採用・資格の取得の支援の方針を今期中に立てておいてください。
各都道府県の申請窓口・手続き詳細については、都道府県別建設業情報ガイドからお住まいの地域を選択してください。
よくある質問(FAQ)
営業所技術者が退職したら、すぐに許可を取り消される?
退職と同時に後任を置き、2週間以内に届け出れば許可は続きます。後任がいない状態は許可の基準を満たさないため、国土交通大臣・知事は許可を取り消さなければならないと定められています(建設業法第29条第1項第1号)。退職が分かった時点で、後任の確保と窓口への相談を始めてください。
後任が見つかるまでの猶予期間はある?
法律に猶予期間の定めはありません。「届出をすれば数か月は待ってもらえる」とは考えず、退職の日までに後任を置けるよう動いてください。間に合わないと分かったら、退職の日を待たずに許可行政庁の窓口へ相談するのが確実です。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)(第7条・第8条・第11条第4項と第5項・第12条・第29条・第29条の3・第50条)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-10-08)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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