解体工事を請け負う際、「建設業許可は本当に必要なのか」と迷われる事業者の方は少なくありません。実際に、建設業許可申請の要件や手続きの複雑さから、無許可のまま工事を請け負ってしまい、法的なトラブルに発展するおそれもあります。特に解体工事は、請負金額や工事内容によって許可の要否が変わるため、正確な知識が求められます。この記事では、解体工事における建設業許可の必要性、行政書士への依頼費用の相場、申請代行の具体的な流れについて詳しく解説します。さらに、無許可工事の法的リスクや安全管理の重要性についても触れ、適正な事業運営のために押さえておくべきポイントをお伝えします。
解体工事に建設業許可が必要なケースとは
請負金額500万円が許可取得の基準
解体工事における建設業許可の要否は、建設業法に基づき請負金額によって明確に定められています。1件の工事請負金額が税込500万円以上となる場合、建設業許可が必須となります。この500万円には材料費や諸経費も含まれるため、解体工事の規模が比較的小さく見えても、廃材処理費用や重機リース費用などを合算すると500万円以上になるケースは珍しくありません。
一方、500万円未満の軽微な工事のみを請け負う場合は、建設業許可を取得する必要はありません。ただし、解体工事を業として行う場合は、建設リサイクル法に基づく「解体工事業者登録」が別途必要となる点に注意が必要です。この登録制度は建設業許可とは別の制度であり、都道府県知事への登録が義務付けられています。
業種別許可の「解体工事業」を正しく理解する
建設業許可には29の業種区分があり、解体工事を請け負うためには「解体工事業」の許可を取得する必要があります。従来は「とび・土工工事業」の許可で解体工事も施工できましたが、平成26年の建設業法改正(平成28年6月1日施行)により、解体工事業が独立した業種として新設されました。
この改正により、解体工事を専門に行う事業者は解体工事業の許可を取得することが原則となっています。既に他の業種許可を持っている場合でも、解体工事を継続的に請け負う予定があるなら、業種追加の手続きが必要です。建設業許可申請を行う際には、自社の事業内容に応じた正しい業種を選択することが、無許可工事の法的リスクを回避する第一歩となります。
行政書士への依頼費用と申請代行のメリット

建設業許可申請を行政書士に頼む費用の相場
日本行政書士会連合会の「令和7年度報酬額統計調査」(全国・消費税込み・立替金を含まない)では、建設業許可の新規申請の報酬は、法人(知事許可)が平均151,341円・最も多い額 165,000円、個人(知事許可)が平均132,040円でした。報酬は事務所ごとに違うため、いくつかの事務所に見積もりを取って確かめます。この行政書士依頼費用には、申請書類の作成代行、必要書類の精査、行政との事前相談の同行などが含まれます。加えて、法定の費用(知事許可は都道府県に納める手数料9万円、大臣許可は国に納める登録免許税15万円)が別途必要となります。
業種追加や更新の報酬は新規より低く、同じ調査で業種追加は平均80,899円、法人の更新(知事許可)は平均82,408円です。ほかの業種の許可をすでに持つ会社が解体工事業を足すときは、業種追加にあたります。ただし、会社の財務状況が複雑な場合や、過去の工事実績の証明に時間がかかる場合は、追加料金が発生することもあります。事前に見積もりを取得し、料金体系を明確にしておくことが重要です。
専門家に依頼するメリットは時間短縮と正確性
建設業許可申請は、経営業務の管理を適正に行う体制(常勤役員等)や専任技術者(2024年12月から営業所技術者)の要件確認、財務諸表の整備、常勤役員等の5年の経営経験の証明(どの書類で証明するかは申請先の手引きで確かめる)など、必要書類が多岐にわたります。自社で申請を行う場合、書類の不備により何度も補正を求められ、許可取得まで数ヶ月を要するケースも少なくありません。
行政書士に依頼する最大のメリットは、申請の正確性と時間短縮です。専門家は建設業法の最新動向や各自治体の運用基準を熟知しており、一度の申請で許可が下りる確率が高まります。また、経営者自身は本業に集中でき、機会損失を防げる点も見逃せません。特に、500万円以上の解体工事の引き合いが見えている場合は、許可が出るまでの期間を逆算して早めに動くことが、受注の機会を逃さないことにつながります。
申請代行の流れと無許可工事の法的リスク
申請から許可取得までの標準的なスケジュール
行政書士による建設業許可申請代行は、以下のステップで進行します。
- 初回相談・要件確認(1週間程度):常勤役員等(経営業務の管理を適正に行う体制)や営業所技術者(2024年12月12日までの呼び名は専任技術者)の要件を満たしているか、財務状況が基準を満たすかを確認します。
- 必要書類の収集・作成(2〜4週間):登記簿謄本、納税証明書、工事実績を証明する契約書・請求書などを準備し、申請書類を作成します。
- 申請書提出(1日):都道府県の建設業課または地方整備局に申請書類を提出します。
- 審査期間:行政による書類審査が行われます。受け付けてから許可が出るまでの日数は、申請先の都道府県の手引や窓口で確かめてください。不備があれば補正指示が出されます。
- 許可通知(1週間):審査が完了すると、建設業許可通知書が交付されます。
かかる期間は、申請先の都道府県の手引きにある標準処理期間で確かめます。書類の準備状況や行政の繁忙期によっても前後します。
無許可工事の法的リスクと実際の摘発事例
建設業許可が必要な工事を無許可で請け負った場合、建設業法第3条違反として3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(第47条・2025年6月から懲役は拘禁刑)が科される可能性があります。法人の場合は、行為者だけでなく法人にも1億円以下の罰金が科される両罰規定が適用されます。
実際に、2026年6月には、大阪・関西万博のタイ館の工事を建設業許可を取らずに請け負った疑いで、建設会社が書類送検されました(日本経済新聞ほか)。この会社は2025年9月に大阪府から30日の営業停止を受けたうえで、刑事事件としても扱われています。無許可営業は「知らなかった」では済まされず、発覚すれば事業継続に致命的な影響を及ぼします。
また、無許可工事は安全管理・リスク対策の面でも問題があります。建設業許可を持たない業者は、適切な安全教育や現場管理体制を整備していないケースが多く、転落事故防止などの基本的な安全対策が不十分になりがちです。実際に、高齢の作業員の転落事故は現場の大きな危険で、2026年6月には埼玉県川口市役所の外階段で塗装作業をしていた70歳の作業員が、高さ約3メートルから転落して亡くなりました(埼玉新聞 2026年6月8日)。適切な許可取得と安全管理体制の整備は、労働災害を防ぐためにも不可欠です。
よくある質問
Q1. 解体工事に建設業許可は必要ですか?
解体工事の請負金額が500万円以上(税込)の場合、建設業許可(解体工事業)が必須です。500万円未満であれば許可不要ですが、建設リサイクル法に基づく解体工事業登録は必要になります。無許可営業は建設業法違反となり、罰則の対象となるため注意が必要です。
Q2. 行政書士に建設業許可申請を依頼する費用相場はいくらですか?
日本行政書士会連合会の全国の調査(令和7年度・消費税込み)では、法人の新規(知事許可)が平均151,341円、業種追加が平均80,899円、法人の更新(知事許可)が平均82,408円です。報酬は事務所ごとに違うため、いくつかの事務所に見積もりを取って確かめます。これに加えて法定の費用(知事許可は手数料9万円、大臣許可は登録免許税15万円)が別途必要です。
Q3. 建設業許可申請にはどのくらいの期間がかかりますか?
審査にかかる日数は、知事許可なら申請先の都道府県の手引、大臣許可なら地方整備局の案内で確かめてください。書類の準備にも時間がかかるため、許可が必要になる工事の時期から逆算して早めに準備を始めます。
Q4. 解体工事業の建設業許可を取得するための要件は何ですか?
主な要件は①経営業務の管理を適正に行う体制(常勤役員等。建設業の経営の経験が5年以上ある役員を置くなど)、②営業所技術者(解体工事施工技士等の有資格者または実務経験者)の配置、③500万円以上の財産的基礎、④欠格要件に該当しないこと、の4点です。すべての要件を満たす必要があります。
Q5. 行政書士への依頼時に用意すべき書類は何ですか?
主な必要書類は、会社の登記事項証明書、定款、財務諸表(申請の直前の決算の1期分)、納税証明書、技術者の資格証明書または実務経験証明、経営者の略歴書、健康保険・年金の加入証明などです。行政書士が事前に詳細なリストを提示してくれるので、それに従って準備を進めましょう。
まとめ
解体工事における建設業許可は、請負金額が税込500万円以上の場合に必須となり、「解体工事業」の業種許可が求められます。行政書士の報酬は全国の調査で法人の新規(知事許可)が平均 約15万円で、事務所ごとに違うため見積もりで確かめ、専門家に依頼することで申請の正確性と時間短縮が実現できます。申請から許可取得までの期間は申請先の標準処理期間で確かめ、計画的に準備することが重要です。無許可工事は建設業法違反として刑事罰の対象となるだけでなく、安全管理・リスク対策の不備により重大な労働災害につながる危険性があります。転落事故防止をはじめとする現場の安全確保のためにも、適正な許可取得は事業者の責務です。まずは自社の請負工事が許可対象に該当するか確認し、必要であれば早期に行政書士へ相談することから始めましょう。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)・日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」(全国・令和8年1月実施・確認日 2026-10-18)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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