建設業界で長年個人事業主として活躍してきた一人親方の皆さまにとって、「法人化すべきか否か」は経営上の重要な決断です。2023年度末の建設業許可業者数は47万9383業者で、前の年度から増えました(2026年3月末は483,823業者)。増えた理由は統計では示されていませんが、経営規模の拡大や入札参加資格の取得を目指して法人化を考える一人親方にとって、手順を知っておく意味は大きくなっています。本記事では、法人化に伴う建設業許可申請の手順、そして虚偽申請リスクを避けながら適正に手続きを進める方法を具体的に解説します。法人化を検討中の方が、次の一歩を踏み出すための実務的な情報を提供します。
2023年度の建設業許可業者数増加が示す市場の変化
許可業者数が再び増加に転じた背景
国土交通省の統計によると、2023年度末時点の建設業許可業者数は47万9383業者となり、前年度から増加に転じました。国土交通省によると、許可業者数は平成30年度末から増えてきて、令和4年度に一度減り、令和5年度末に再び増えました。増加の理由は統計では示されていません。
一人親方が法人化を考えるきっかけには、取引先からの要請や入札参加資格の審査への対応などがあります。法人格を持つと社会的な信用が上がり、受注の機会を広げやすくなります。
一人親方が法人化を選ぶ3つの理由
一人親方の法人化タイミングを判断する際、多くの経営者が重視しているのは以下の3点です。
1. 入札参加資格の取得
入札参加資格は個人事業主でも申請できる自治体が多いものの、法人のほうが審査の書類をそろえやすく、取引先からの見え方でも有利になることがあります。
2. 取引先からの信用向上
元請け業者や大手建設会社との取引において、法人格の有無が審査基準となる場合があります。コンプライアンス意識の高まりとともに、法人化は取引継続の前提条件となりつつあります。
3. 事業承継や人材採用の円滑化
個人事業では難しい事業承継も、法人化により組織として継続できます。また、優秀な人材を採用する際にも、法人格は求職者に安心感を与える要素となります。
法人化と建設業許可申請の正しい手順
建設業許可申請で押さえるべき要件
法人化を決断した後、多くの一人親方が直面するのが建設業許可申請です。建設業法に基づき、500万円以上(消費税込み。建築一式工事の場合は1500万円以上、延べ面積150㎡未満の木造住宅の工事を除く)の工事を請け負う場合には許可が必要です。
建設業許可の取得には、以下の5つの要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者(経管)の設置:建設業の経営業務について5年以上の経験を持つ者
- 専任技術者(2024年12月から営業所技術者)の配置:一定の資格または実務経験を持つ技術者
- 財産的基礎:自己資本が500万円以上、または同額以上の資金調達能力
- 誠実性:不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
- 欠格要件に該当しないこと:暴力団員でないこと、破産者でないことなど
これらの要件を証明する書類を正確に準備することが、スムーズな許可取得の鍵となります。
虚偽申請リスクを回避するための注意点
2026年4月には、福岡県大任町の建設会社の社長らが、勤務の実態がない人を常勤役員や技術者とした虚偽の書類で建設業の許可を得た疑いで逮捕されました(2026年9月に執行猶予つきの有罪判決)。このような虚偽申請は建設業法違反に該当し、刑事罰の対象となります。
虚偽申請リスクを避けるために、以下の点に注意が必要です。
- 実務経験証明は正確に:技術者の実務経験を証明する書類は、実際の工事契約書や注文書に基づいて作成します
- 常勤性の証明は慎重に:営業所技術者は営業所に常勤していることが条件です。社会保険加入記録などで常勤性を証明します
- 資格証明書は原本確認:保有資格を証明する際は、必ず原本を確認し、写しを提出します
一人親方の法人化タイミングで建設業許可を同時に取得する場合、経験年数の計算や証明書類の準備に不安があれば、行政書士など専門家に相談することをおすすめします。適正な申請手続きは、将来的な事業展開の基盤となります。
法人化後の実務──入札参加資格と業種追加のタイミング
入札参加資格審査申請のスケジュール
法人化と建設業許可取得が完了したら、次のステップは入札参加資格審査への申請です。公共工事の受注を目指す場合、この審査を通過することが必須となります。
定期受付の時期と回数(2年に1度など)、随時受付の有無は自治体ごとに異なります。法人化したら、入札に参加したい自治体の受付の時期を早めに確かめてください。
申請に必要な主な書類は以下の通りです。
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 納税証明書(法人税、消費税等)
- 建設業許可通知書または許可証明書の写し
- 経営事項審査結果通知書(公共工事の場合)
- 財務諸表(貸借対照表、損益計算書等)
申請から審査完了までには数か月を要する場合があるため、法人化後は早めに準備を開始することが重要です。
業種追加申請で事業領域を拡大する
法人化当初は主要な業種のみで建設業許可を取得し、その後の事業展開に応じて業種追加申請を行うのが一般的な戦略です。建設業許可は29業種に分かれており、受注したい工事内容に応じて適切な業種を追加していきます。
業種追加申請のタイミングとしては、以下のケースが考えられます。
- 新規取引先の要請:取引先から特定業種の許可取得を求められた場合
- 入札案件への対応:入札条件に含まれる業種を追加する必要がある場合
- 事業多角化:経営戦略として新たな工事分野に進出する場合
業種追加申請では、追加する業種に対応する営業所技術者(2024年12月12日までの呼び名は専任技術者)の配置が必要です。自社で有資格者を雇用するか、代表者自身が資格を取得するかを検討します。一人親方の法人化タイミングで、将来的な業種追加も見据えて人材計画を立てることが、中長期的な成長につながります。
よくある質問

Q1. 一人親方が法人化するメリットは何ですか?
取引先からの信用の向上、事業の承継のしやすさ、人を雇うときの安心感などが主なメリットです。なお、建設業許可の要件は個人でも法人でも同じです。税制面でも所得分散による節税効果が期待できます。
Q2. 建設業許可を取得する際の資本金要件はいくらですか?
建設業許可における財産的基礎要件は、一般建設業で500万円以上の資金調達能力が必要です。資本金だけでなく、預金残高証明や融資可能額証明でも証明可能です。特定建設業の場合は、資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上・流動比率75%以上・欠損の額が資本金の20%を超えないこと、の4つを直前の決算で満たす必要があります。
Q3. 法人化した一人親方が建設業許可を取る際の注意点は?
経営業務管理責任者として5年以上の経営経験、または6年以上の補佐経験が必要です。個人事業主時代の経験も認められますが、確定申告書や契約書等で証明する必要があります。また営業所技術者の配置も必須で、資格や実務経験10年以上の証明が求められます。
Q4. 2023年度に建設業許可業者数が増加した主な要因は?
増えた理由は、国土交通省の統計では示されていません。前年度より業者数が増えたという数字だけが公表されています。
Q5. 法人化に向く時期はいつですか
法人化に向く時期は会社ごとに違います。取引先の求め・入札の予定・社会保険の手続きの時期を並べて決めましょう。また早期に法人化・許可取得することで、許可や社会保険の手続きを早めに整えておけます。
まとめ
2023年度の建設業許可業者数は増加に転じましたが、理由は統計では示されていません。本記事では、法人化による信用力向上と入札参加機会の拡大、建設業許可申請における5つの要件と虚偽申請リスクの回避方法、法人化後の入札参加資格審査と業種追加申請の実務的な流れという3つの観点から、一人親方の法人化タイミングと手順を解説しました。法人化は単なる組織形態の変更ではなく、事業拡大と持続的成長のための戦略的選択です。まずは自社の経営状況と将来ビジョンを整理し、法人化のメリットを最大化できるタイミングを見極めることから始めましょう。
自社や取引先の許可の業種・許可番号・有効期限は、会社名や許可番号から調べられる建設業許可業者の検索でも確かめられます。
地域と業種ごとの許可を持つ会社は、都道府県別・業種別の建設会社の一覧から探し、会社のページで許可(業種・一般/特定・有効期限)を確かめられます。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)・国土交通省「令和7年度末の建設業許可業者数調査の結果」・国土交通省「令和5年度末の建設業許可業者数調査の結果」・NetIB-News(福岡県の一般建設業許可の取り消し)(確認日 2026-10-19)
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