解体工事業を営む建設会社・工務店・リフォーム会社の皆様の中には、「建設業許可は必要だけれど、実際のところ何から始めたらいいのか」「無許可で工事を受注してしまった場合、どうなるのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。建設業許可(解体工事業)と産業廃棄物収集運搬業の許可は別の許可で、関係を正しく理解しておくことが大切です。本記事では、静岡県をはじめ全国の解体工事業者が失敗しないために知るべき、許可取得の要件・手続き、無許可工事の現実的なリスク、そして空き家対策補助金を活用する際の注意点を詳しく解説します。
解体工事業における「許可」の実態~なぜ無許可工事が起こるのか
建設業許可(解体工事業)の位置付けと誤解
解体工事業を営むためには、建設業許可(解体工事業)の取得が法律で義務付けられています。建設業法第3条により、解体工事を請け負う場合は都道府県知事(2つ以上の都道府県に営業所を置く場合は国土交通大臣)から許可を受ける必要があります。
しかし、多くの中小規模の工務店やリフォーム会社では、「小規模な案件だから大丈夫」「親会社の許可があれば下請けは問題ない」といった誤認が存在します。これらは致命的な誤解です。請負代金500万円以上(税込)の解体工事には解体工事業の許可が要り、500万円未満だけなら建設リサイクル法の解体工事業の登録が要ります。元請・下請の関係は問いません。
無許可で解体工事を受注すれば、営業停止などの処分を受けるおそれがあります。許可取得がおろそかになりやすい理由として、解体工事は「壊す作業」であり、新築や大規模リフォームほど許可の重要性が認識されにくいという業界特性が挙げられます。
産廃収集運搬業の許可との関係性
建設業許可(解体工事業)と産廃の許可は別の制度です。建設工事の廃棄物は元請が排出事業者になるため(廃棄物処理法第21条の3)、元請が自社の工事の廃棄物(がれきなど)を自ら運ぶなら、産廃収集運搬業の許可は要りません。自ら処分する場合も処分業の許可は要りませんが、処理施設の規模によっては施設の設置の許可が要ることがあります。下請や他社の廃棄物を運ぶ・処分するなら、業の許可が要ります。処理を任せるときは、許可業者と書面で契約します。
建設業許可を持っていても、産廃の収集運搬業の許可を持たずに他人の廃棄物を運ぶと、廃棄物処理法の違反になります。
つまり、解体工事業の許可は次の2つを分けて考えます:
- 建設業許可(解体工事業) ~ 工事の請負・実施に必要
- 産廃収集運搬業の許可 ~ 下請や他社の廃棄物を運ぶなら必要(元請が自社の工事の廃棄物を自ら運ぶだけなら不要)
無許可工事が招く現実的なリスク~罰則と経営への影響

行政処分と刑事責任の違い
無許可で解体工事を請け負った場合、行政処分(営業停止)と刑事責任(罰金・拘禁刑)の両方が科される可能性があります。
行政処分:営業停止処分
許可を持つ業者が法令に違反すると、許可を与えた都道府県知事(または国土交通大臣)から営業停止などの処分を受けます(第28条)。この処分は、対象となる業種に限定されることもあれば、全業種を対象とされることもあります。営業停止の期間は違反の中身で決まり、国土交通省の監督処分の基準に目安が示されています。
営業停止中は、該当する業種の新規工事受注ができません。既存の取引先との関係が悪化し、競争力を失うリスクは計り知れません。
刑事責任:罰金・拘禁刑(2025年6月より前は懲役)
建設業法第47条では、無許可営業について「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」と定められています(法人は1億円以下の罰金=第53条)。この規定は、悪質な無許可営業に対して適用される傾向が強まっています。
取引先企業への信用失墜と連鎖的な影響
無許可工事が発覚すると、以下の連鎖的なダメージが生じます:
- 発注元企業への報告義務違反 ~ 元請けが無許可業者に下請させた場合、元請けも責任を問われる可能性がある
- 補助金返納請求 ~ 空き家対策補助金など、公的補助金を受けた案件では、無許可が発覚すると返納が求められることがある
- 損害賠償請求 ~ 発注者が工事の適法性を信頼して契約したにもかかわらず無許可だった場合、損害賠償請求されるリスク
- 金融機関との信用悪化 ~ 行政処分が公表されると、融資や資金調達が困難になる
公共工事や大きな民間の工事では、事前に許可の有無を確かめられることがあります。
解体工事業の許可取得~要件と申請手続きの実務
建設業許可(解体工事業)の主要要件
建設業許可を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 常勤役員等(経営業務の管理体制)の設置
建設業(業種を問わない)の経営の経験がある常勤の役員などを置く必要があります。例えば、建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験がある人です。
2. 専任の技術者の配置
解体工事業に関する技術資格を持つ専任技術者(2024年12月から営業所技術者)を、建設業許可を取得した企業の営業所ごとに配置しなければなりません。解体工事業の許可で認められる資格には、以下のものがあります:
- 1級または2級の土木施工管理技士・建築施工管理技士(2級は種別に条件あり)
- 技術士(建設部門など)
- とび技能士(2級は合格後3年以上の実務経験)
- 解体工事施工技士(登録解体工事試験の合格者)
- 解体工事の実務経験10年以上(指定学科の卒業者は短くなる)
土木・建築の施工管理技士などで平成27年度までに合格した人は、解体工事の実務経験1年以上か、登録解体工事講習の受講が必要です。
3. 財産的基礎
許可を受けようとする企業が、以下のいずれかの条件を満たす必要があります:
- 自己資本額が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達能力があること(金融機関の残高証明書などで示す)
4. 誠実性
請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが条件です(建設業法第7条第3号)。あわせて、一定の刑罰を受けて期間がたっていないなどの欠格要件(第8条)に当てはまらないことも必要です。
申請の手続きで気をつけること
建設業許可申請は、許可行政庁(知事許可は都道府県の建設業の担当窓口)に出します。2023年1月からは、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)でも申請できます。
- 書類に不備があると補正に時間がかかるため、手引きで添付書類を確かめる
- 元請が自社の工事の廃棄物を自ら運ぶなら産業廃棄物収集運搬業の許可は要らないが、下請や他社の廃棄物を運ぶなら要る
- 審査の標準処理期間は、許可行政庁の手引きで確かめる
空き家対策補助金の活用時における許可要件

補助金受給前の許可確認の重要性
静岡県内の市町村にも、空き家の解体に使える補助金があります。補助の条件として、解体工事業の許可や登録を受けた業者による工事であることを求める要綱もあるため、市町村の要綱で確かめてください。
補助金申請時に無許可業者を下請けに入れた場合、以下のリスクが生じます:
- 補助金返納請求 ~ 交付された補助金の返還を求められることがある
- ペナルティ加算 ~ 返納時に遅延金や違約金が加算される場合がある
- 将来の補助金申請不可 ~ 当該市町村の補助金制度から一定期間除外される可能性
補助金の申請では、許可の状況を確かめられることがあります。理由は、公的資金の適正使用を担保するためです。
許可と産廃許可をあわせて確かめられることがある
補助金の申請では、次の両方を確かめられることがあります:
- 建設業許可(解体工事業)の有無と有効期限
- 産廃収集運搬業の許可の有無と有効期限(下請や他社の廃棄物を運ぶ場合)
産廃許可を持っている場合は、許可の有効期限が5年間のため、申請直前に失効していないかの確認が重要です。
解体工事業の許可取得へ向けた実践的なステップ
ステップ1:現状診断(許可の有無・要件充足状況の確認)
まず自社が以下の状況のどれに当てはまるかを確認してください:
- 既に建設業許可(解体工事業)を保有している場合 ~ 有効期限と、廃棄物を自ら運ぶか許可業者に任せるかを確認
- 建設業許可は保有していないが、解体工事を受注している場合 ~ 至急許可申請の準備を開始
- これまで許可が不要と考えていた場合 ~ 過去の無許可工事について法務担当者に相談
ステップ2:要件充足の準備
以下の要件について、自社が満たしているかを確認します:
- 常勤役員等(建設業の経営の経験5年以上など)の確保
- 営業所技術者等(解体工事施工技士など)の確保
- 自己資本500万円以上、または融資の約定書準備
- 誠実性(請負契約で不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと=第7条第3号。刑罰などは欠格要件=第8条)
要件を満たさない場合は、該当する資格取得や人材確保に着手します。
ステップ3:廃棄物の運搬と処理の体制を決める
元請が自社の工事の廃棄物を自ら運ぶだけなら、産廃収集運搬業の許可は要りません。下請として廃棄物を運ぶ、または他社の廃棄物を運ぶ計画がある場合は、産廃収集運搬業の許可申請も併行して行うことをお勧めします。処理を任せるときは、許可業者と書面で契約します。建設業許可の申請窓口は、知事許可なら都道府県の建設業の担当課です。
ステップ4:申請書類の作成と提出
申請書類は、オンライン申請にも対応しています。ただし、要件確認が厳格であるため、専門家(行政書士など)に相談しながら作成することをお勧めします。
よくある質問

Q1. 解体工事業の許可を取得するには、どのような資格や経験が必要ですか?
500万円以上の解体工事を請け負うには、建設業許可(解体工事業)が要ります。常勤役員等(建設業の経営の経験など)と営業所技術者(資格か10年以上の実務経験など)を置き、財産的基礎などの要件を満たします。500万円未満の工事だけなら、建設リサイクル法の解体工事業の登録を受け、技術管理者を置きます。
Q2. 無許可で解体工事を行った場合、具体的にどのようなペナルティを受けますか?
無許可工事は建設業法違反として、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処せられます。さらに経営者や現場責任者も個人責任を問われる可能性があります。行政指導による工事中止命令や、発注者との信頼損失、許可取得時の不利益も発生します。
Q3. 建設業許可と解体工事業許可は別ですか?兼業できますか?
解体工事業は、建設業許可の29業種の1つです(2016年6月から)。建設業許可で解体工事を行うには「解体工事業」の業種の許可が要ります。別の制度として、建設リサイクル法の解体工事業の登録があります(500万円未満の解体工事だけを請け負う場合)。
Q4. 許可申請に要する期間と費用はどのくらいですか?
審査の標準処理期間は、許可行政庁の手引きで確かめてください。知事許可の手数料は、新規の申請で9万円、更新で5万円です。資格や講習で要件を満たす場合は、その費用も別にかかります。複雑な案件は行政書士への依頼で別途報酬が発生する場合があります。
Q5. 解体工事業許可の更新はいつ行い、どのような手続きが必要ですか?
許可の有効期限は5年で、更新の申請は満了の30日前までに出します(受付の始まりは手引きで確かめてください)。更新時は常勤役員等と営業所技術者等の配置状況確認、決算書類提出、法令遵守状況の報告が必要です。更新手数料も発生します。期限切れ前の早期申請をお勧めします。
まとめ
建設業許可(解体工事業)の取得は、単なる法令遵守の問題にとどまりません。無許可工事は営業停止や罰金といった直接的なリスクだけでなく、取引先との信用喪失や補助金返納などの連鎖的なダメージをもたらします。
重要なポイントは以下の3つです:
- 無許可工事は経営を左右する重大リスク ~ 500万円以上(税込)の解体工事には解体工事業の許可、500万円未満だけなら建設リサイクル法の登録が要る
- 廃棄物の扱いを許可とあわせて決める ~ 元請が自社の工事の廃棄物を自ら運ぶなら収集運搬業の許可は要らないが、下請や他社の廃棄物を運ぶなら要る。処理を任せるときは許可業者と書面で契約する
- 補助金活用時は許可の確認がある ~ 空き家対策補助金など公的資金を使う工事では、発注の前に許可の有無と業種を確かめられるため、許可の書類をすぐ出せるようにしておく必要がある
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」・廃棄物処理法(e-Gov 法令検索)(確認日 2026-09-28)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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