一人親方との​請負契約|​偽装請負と​判断されないための​確認項目

企業検索はメインサイトから

建設業許可データベースのトップへ
建物の模型の前で契約書に署名する手元

一人親方と元請・一次下請の間で「実態は雇用なのに請負契約を結んでいる」という状態は、偽装請負として労働者派遣法・職業安定法第44条(労働者供給の禁止)・労働基準法の問題になる。建設業務への労働者派遣はそもそも禁止されている(労働者派遣法第4条第1項第2号)ため、「昔からこうやっていた」では通用しない。一人親方との適正な請負契約を維持するために、判断基準と実務チェックポイントを整理しておく必要がある。

目次

偽装請負とは何か——法的定義と建設業への影響

偽装請負とは、契約書上は「請負」または「業務委託」となっているにもかかわらず、実態として発注者が受注者(一人親方等)に対して直接指揮命令を行っている状態を指す。

法的根拠は昭和61年労働省告示第37号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(いわゆる「37号告示」)だ。この告示では、「請負」と認められるための要件として「請負業者が自ら作業者を指揮する」「機材・材料を請負業者が調達する」等が定められている。

建設業界特有のリスクとして、以下の2点がある。

  • 労働基準法上のリスク:一人親方が「労働者」と認定された場合、未払い賃金・残業代の支払い義務が発生する
  • 派遣と労働者供給の禁止:建設業務への労働者派遣は禁止されており(労働者派遣法第4条)、請負の形で人だけを送り込んで指揮命令させると、職業安定法第44条の労働者供給に当たるおそれがある
  • 建設業法の線引き:一人親方への発注が軽微な工事(1件500万円未満・建築一式は1,500万円未満か延べ面積150平方メートル未満の木造住宅。金額は消費税込み)なら、相手が建設業許可を持っていなくても契約は適法。500万円以上の工事を許可の無い相手に下請けに出すと、元請も監督処分(第28条)の対象になる

一人親方が「労働者」と見られるかの判断の目安

赤い手袋で足場のパイプにクランプを留める手元
赤い手袋で足場のパイプにクランプを留める手元(イメージ)

労働基準法上の「労働者」かどうかは、契約書の名称ではなく実態で判断される(労働基準法研究会報告「労働基準法の「労働者」の判断基準について」昭和60年)。上の37号告示は「派遣か請負か」の区分の基準で、ここでの「労働者かどうか」とは別の物差しだ。主な目安は次のとおり。

判断基準請負(適正)偽装請負(問題)
①指揮命令本人または請負会社の指示で動く元請・一次下請の社員が直接作業指示を出している
②時間管理始業・終業・休憩を自分で決める元請指定の時間で拘束されている
③道具・材料一人親方が自分で調達・用意する元請から支給されている
④報酬の性質仕事の完成・出来高で報酬が決まる日当・時給形式で支払われている
⑤専属性複数の発注者と契約できる実態上1社にしか働けない状況
⑥仕事の依頼を断れるか依頼ごとに受けるか断るかを選べる指示された仕事を断れない
⑦代わりを立てられるか本人の判断で別の職人に任せたり補助を使ったりできる本人が必ず作業しなければならない

どれか1つで決まるのではなく、全体の実態で判断される。「問題」の側に当てはまる項目が重なるほど、労働者と見られやすくなる。

よくある偽装請負のパターンと具体事例

パターン1:「応援」名目での日当払い

契約書を交わさず「応援に来てもらう」という形で一人親方を使い、日当で支払うケース。請負の実態がなく、実態は労働者派遣または雇用契約と判断されやすい。特に繁忙期の人手不足を補うための慣習的な「応援体制」はリスクが高い。

パターン2:元請社員が一人親方に直接作業指示

一次下請に再下請として一人親方を使わせているにもかかわらず、元請の現場監督が一人親方に直接「今日はここをやって」と指示するケース。形式上は再下請負であっても、指揮命令関係が元請にあれば偽装請負と判断される。

パターン3:元請支給の道具・制服で作業

一人親方に元請の制服を着せたり、元請所有の重機や工具を使わせたりするケース。道具・材料の調達が請負業者側にないことは、独立した請負業者ではないと見なされる根拠の一つになる。

偽装請負防止チェックリスト——契約前に確認すべき12項目

作業着に手袋の人がクリップボードに書き込む手元
作業着に手袋の人がクリップボードに書き込む手元(イメージ)

一人親方との契約締結前・現場着工前に以下の12項目を確認する。すべて「OK」でなければ契約内容または現場運営の見直しが必要だ。

契約書の整備(締結前確認)

  • ☐ 書面による請負契約書を締結しているか(口頭契約・発注書のみは不可)
  • ☐ 契約書に「工事の内容・工期・請負代金額」が明記されているか
  • ☐ 報酬は出来高払いまたは固定額か(日当・時給形式になっていないか)
  • ☐ 一人親方の建設業許可番号または職人の場合は職種を記載しているか

現場運営(着工後の確認)

  • ☐ 一人親方が自分の判断で作業の進め方を決めているか(元請や一次下請の社員が作業のやり方を直接指示していないか)
  • ☐ 始業・終業・休憩時間を一人親方が自分の判断で決められる状態か
  • ☐ 作業に使う道具・材料は一人親方が自分で調達しているか
  • ☐ 元請の制服・ユニフォームを一人親方に着用させていないか

社会保険・労災(雇用リスクの確認)

  • ☐ 一人親方が一人親方労災保険(特別加入)に加入しているか証明書を確認したか
  • ☐ 実態として特定の1社にしか働けない状況になっていないか
  • ☐ 月の稼働日数・時間が雇用に近い状態(週5日フル稼働等)になっていないか
  • ☐ 再下請負通知書を取得して施工体制台帳に記録しているか

関連:施工体制台帳と再下請負通知書——元請が作成・保管すべき書類と記載ミスのリスク

偽装請負が発覚した場合のリスク——処分の種類と実態

電卓とカラーコーンとブロックとバリケード
電卓とカラーコーンとブロックとバリケード(イメージ)

偽装請負が行政調査で発覚した場合、複数の法律に基づく処分が同時に科される可能性がある。

根拠法処分内容主な対象
労働基準法是正勧告・未払い賃金の遡及払い命令労働者と認定された一人親方を使った会社
労働者派遣法指導・勧告・改善命令(建設業務への派遣は禁止)実態が派遣と認定された受け入れ先と送り出し元
職業安定法(第44条)労働者供給事業の禁止・罰則の対象人を送り込んで他人の指揮命令下で働かせた側と、受け入れた側
建設業法指示処分・営業停止(第28条)500万円以上の工事を許可の無い相手に下請けに出した元請・一次下請
社会保険関連法保険料の遡及徴収労働者性が認定された場合の使用者

あわせて押さえたいのがフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律・2024年11月1日施行)だ。従業員を使わない一人親方に仕事を頼むときは、仕事の内容・報酬の額・支払期日などを書面かメールなどで示す義務がある(第3条)。書面の請負契約書を交わすことは、偽装請負を避けるだけでなく、この義務を果たすことにもつながる。

関連記事

📋 偽装請負防止チェックリスト(12項目)

一人親方との契約前に全項目を確認してください

📝 契約書面の確認

🔍 指揮命令・実態の確認

✅ 証明書・書類の確認

※ このチェックリストは印刷してご利用いただけます。チェックは画面上でも行えます。

まとめ

  • 偽装請負の判断は「契約書の名称」ではなく「実態の指揮命令関係・報酬形式・道具の調達者」で決まる。日当払い・元請からの直接作業指示は特にリスクが高い
  • 一人親方との契約では、書面による請負契約書の整備・出来高払いの明記・一人親方労災の加入確認が最低限必要な3点セットだ
  • 偽装請負は労働者派遣法・職業安定法・労働基準法の問題になり、建設業務への派遣はそもそも禁止。2024年11月からはフリーランス法で、一人親方への取引条件の明示も義務になっている

次のアクション

  1. 現在使用中の一人親方全員について、上記12項目チェックリストを実施する。特に「元請社員が直接作業指示を出しているか」と「報酬が日当形式になっていないか」を優先確認する
  2. 口頭または発注書のみで対応している一人親方との契約を、工事内容・工期・請負代金額が明記された書面契約に切り替える

自社や取引先の許可の業種・許可番号・有効期限は、会社名や許可番号から調べられる建設業許可業者の検索でも確かめられます。

取引先や下請の会社の許可(業種・一般/特定・有効期限)は、都道府県別・業種別の建設会社の一覧から会社のページを開いて確かめられます。

出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

よくある質問

Q: 一人親方との契約が偽装請負と見られるのはどんなときですか?

契約書の名前ではなく実態で判断されます。元請や一次下請の社員が直接作業を指示している、始業・終業の時間を決めて拘束している、道具や材料を支給している、日当や時給で払っている、事実上1社でしか働けない、といった状態が重なると問題視されやすくなります。

Q: 一人親方と契約するとき、最低限そろえるものは何ですか?

工事の内容・工期・請負代金額を書いた書面の請負契約書、出来高または固定額の報酬の定め、一人親方労災保険(特別加入)の加入証明の確認の3つです。口頭や発注書だけでの依頼は避けます。

Q: 偽装請負と判断されると、どんな影響がありますか?

一人親方が労働者と認められると、未払い賃金の支払いや社会保険料の遡及徴収を求められることがあります。また、建設業務への労働者派遣は禁止されており、労働者派遣法や職業安定法第44条(労働者供給の禁止)の違反として指導や罰則の対象になることがあります。

取った許可の業種と番号は、元請や施主が会社のホームページでも確かめます。建設業のホームページに載せる物|許可・業種・施工事例・採用の書き方

登録しなくても​使えます:補助金の​締切​カレンダー⁠(PDF・CSV)・​見積書と​工程表の​ひな形⁠(Excel・Word)・​見学会の​チラシの​テンプレート⁠(PDF・Word)。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小建設企業の経営改善・財務強化・事業承継を専門とするビジネスアドバイザー。建設業特有の下請管理・支払サイト問題・財務諸表の見方を中心に、経営基盤の強化につながる実務情報を発信。建設業の経審(経営事項審査)と公共工事受注の仕組み、労働環境改善・働き方改革対応の最前線情報にも精通。M&A・事業承継・廃業検討中の建設会社向け情報も担当。

目次