「本業の強みを活かして工事も請け負いたい」「石川県で建設業許可を取るには何が必要か」――印刷・看板・設備の販売など、建設業の外から工事の分野へ広げようとする会社は少なくありません。この記事では、石川県の「建設業の許可申請のしおり」(令和8年4月改訂版・石川県土木部監理課)をもとに、異業種の会社が許可を取るときに押さえる要件・手数料・申請先と、つまずきやすい点を順に整理します。文中の会社の例は、説明のための想定の例です。
異業種から建設業へ まず「許可が要る工事か」を確かめる
500万円未満の工事だけなら許可は要らない
建設業許可は、すべての工事に要るわけではありません。手引きでは、建築一式工事なら1件の請負代金が1,500万円未満(または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅)、それ以外の工事なら1件の請負代金が500万円未満(消費税込み)の「軽微な工事」だけを請け負う場合は、許可を受けなくてもよいとされています。
たとえば、看板の製作・取付けを請け負うデザイン会社(想定の例)が、1件500万円未満の工事しか受けないのであれば、許可が無くても営業はできます。許可が必要になるのは、500万円以上の工事を請け負いたいとき、または元請の会社から「許可を持っていること」を取引の条件にされたときです。
異業種の会社が許可を取る前に考える3つのこと
1. 本業と工事のつながりが説明できるか
印刷・デザインの会社なら看板や内装の仕上げ、設備の販売会社ならその取付けのように、本業の延長にある工事から始めると、営業先も技術者も見つけやすくなります。どの業種で申請するかは工事の中身で決まるため、迷うときは申請の前に石川県土木部監理課に相談してください。
2. 経営の経験と技術者を社内でそろえられるか
許可には、建設業の経営の経験を持つ常勤の役員と、営業所ごとの技術者(営業所技術者)が要ります。異業種の会社では、ここが一番の壁になります(次の章で詳しく見ます)。
3. 取った後の手続きを続けられるか
許可は取って終わりではありません。毎事業年度の決算変更届、役員や技術者が替わったときの変更の届け、5年ごとの更新が続きます。事務を誰が受け持つかを、申請の前に決めておくと安心です。
石川県で建設業許可を取るための要件
業種ごとに見ると、石川県で当サイトに掲載している会社は次のとおりです(2026年10月16日に数えた)。1社がいくつもの業種の許可を持つことがあるため、業種の数を足しても会社の数にはなりません。
| 業種 | 石川県の掲載の会社 |
|---|---|
| とび・土工工事業 | 1,964社 |
| 建築工事業 | 1,679社 |
| 土木工事業 | 1,599社 |
| 管工事業 | 939社 |
| 電気工事業 | 782社 |
| 解体工事業 | 750社 |
| 大工工事業 | 735社 |
| 舗装工事業 | 727社 |
| 内装仕上工事業 | 721社 |
| 水道施設工事業 | 698社 |
| 鋼構造物工事業 | 651社 |
| 石工事業 | 584社 |
| 塗装工事業 | 512社 |
| しゆんせつ工事業 | 431社 |
| 屋根工事業 | 368社 |
| 造園工事業 | 342社 |
| タイル・れんが・ブロツク工事業 | 318社 |
| 機械器具設置工事業 | 289社 |
| 建具工事業 | 256社 |
| 板金工事業 | 246社 |
| 消防施設工事業 | 220社 |
| 防水工事業 | 213社 |
| 電気通信工事業 | 203社 |
| 左官工事業 | 192社 |
| 鉄筋工事業 | 156社 |
| ガラス工事業 | 146社 |
| 熱絶縁工事業 | 137社 |
| さく井工事業 | 38社 |
| 清掃施設工事業 | 2社 |
手引きが挙げる主な要件
石川県の手引きでは、許可を受けるための要件として、次のものが挙げられています。
- 適正に経営業務を行うことができる体制があること(常勤役員等)
- 適切な社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)に加入していること
- 営業所ごとに営業所技術者等を専任で置くこと
- 請負契約について誠実性があること
- 財産的基礎または金銭的信用があること
- 欠格要件に当てはまらないこと
常勤役員等=建設業の経営の経験が要る
法人なら常勤の役員のうち1人が、たとえば「建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験」を持っている必要があります。ほかに、経営業務の管理責任者に準ずる地位での経験や、建設業での役員の経験と、財務・労務・業務運営の経験を持つ人を補佐に置く組み合わせも認められています。
注意したいのは、どの形でも「建設業に関し」の経験が軸になることです。印刷業や小売業の役員の経験だけでは足りないため、異業種の会社は、建設業の経営の経験を持つ人を常勤の役員に迎えるかどうかを最初に検討することになります。
営業所技術者=資格か実務経験が要る
一般建設業の営業所技術者は、次のどれかに当てはまる人です。
- 申請する業種に関係する学科を修め、大学(短大・高専を含む)卒業後3年、高校卒業後5年以上の実務経験がある人
- 学歴を問わず、1つの業種について10年以上の実務経験がある人
- 申請する業種に関する国家資格などを持つ人
石川県知事許可では、実務経験で営業所技術者等になれるのは1人につき2業種までで、実務経験の期間の重複も原則として認められていません。また、営業所技術者等と常勤役員等は、ほかの会社の技術者や宅地建物取引士など、ほかの法令で専任が求められる人と兼ねることはできません(同じ会社の同じ営業所なら兼ねられます)。
異業種の会社では、施工管理技士などの資格を持つ人を採用するか、社内の人が資格を取るまで待つかを決めることになります。実務経験で証明する場合は、過去の工事の契約書や注文書などで経験を裏付ける必要があり、準備に時間がかかりやすい部分です。
財産的基礎=一般建設業は500万円が目安
一般建設業の場合は、自己資本(法人は貸借対照表の純資産合計)が500万円以上あること、または500万円以上の資金の調達能力があることが求められます。特定建設業はさらに厳しく、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上などの基準があります(一般建設業と特定建設業の違い)。
石川県での申請の流れ・手数料・申請先
申請先は管轄の土木総合事務所
石川県知事許可(営業所が石川県内だけの場合)の申請書は、主たる営業所を管轄する土木総合事務所(南加賀・石川・県央・中能登・奥能登)に出します。手引きでは、令和3年度から郵送での提出もできるとされています。営業所がほかの都道府県にもある場合は国土交通大臣の許可になり、北陸地方整備局が窓口です。
実務経験の証明などで判断が分かれる場合は、手引きの中で「土木事務所に申請する前に、あらかじめ県監理課に相談し、確認を受けてください」と書かれている書類もあります。異業種の会社は、初めての申請の前に一度相談しておくと、出し直しを減らせます。
新規の手数料は9万円
しおり(令和8年4月改訂版)では、石川県知事許可の新規の手数料は9万円(一般と特定を同時に申請する場合は18万円)、業種の追加と更新は5万円で、石川県証紙で納めるとされています。証紙は各土木総合事務所などで販売されています。納め方は変わることがあるため、申請の前に県の監理課のページで最新の案内を確かめてください。
主な書類
- 建設業許可申請書(様式第1号)
- 工事経歴書(様式第2号)・直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(様式第7号)
- 営業所技術者等証明書(様式第8号)と、必要に応じて実務経験証明書(様式第9号)
- 財務諸表・営業の沿革・健康保険等の加入状況 など
様式は石川県土木部監理課のホームページから入手できます。異業種の会社は、とくに様式第7号(経営の経験)と様式第8号・第9号(技術者)の裏付けの資料集めに時間がかかります。
許可を取った後に続く手続き
毎年の決算変更届と5年ごとの更新
許可を受けた会社は、事業年度が終わってから4か月以内に決算変更届を出します。役員・営業所技術者・営業所の所在地などが変わったときは、変更の届けも必要です。許可の有効期間は5年で、続けて営業するには期間が終わる前に更新の申請をします。
異業種の会社では、本業の決算の事務と並行して建設業の届けを出すことになるため、決算の時期に合わせて担当と予定を決めておくと漏れを防げます。
会社を引き継いで許可を得る方法もある
経営の経験を持つ役員や技術者を自社で用意するのが難しい場合、許可を持つ建設会社を株式の取得などで引き継ぐ方法もあります。ただし、引き継いだ後も常勤役員等や営業所技術者が要件を満たし続けている必要があり、その人たちが辞めると許可を維持できなくなります。手続きの形によって扱いが変わるため、行政書士などの専門家と、県の監理課に事前に確かめてください。
よくある質問
Q1. 異業種から建設業許可を取るときの一番の壁は何ですか
建設業の経営の経験を持つ常勤の役員と、営業所技術者をそろえることです。どちらも「建設業に関する」経験や資格が求められるため、本業の役員や社員の経験だけでは足りないことが多く、人を迎えるか資格を取るかの準備が要ります。
Q2. 500万円未満の工事しか受けないなら許可は要りませんか
建築一式工事以外で1件の請負代金が500万円未満(消費税込み)の工事だけなら、許可が無くても請け負えます。ただし、元請の会社から許可を取引の条件にされることもあるため、取引先の求めも確かめておくと安心です。
Q3. 石川県の新規の手数料はいくらですか
石川県のしおり(令和8年4月改訂版)では、知事許可の新規は9万円、一般と特定を同時に申請する場合は18万円です。業種の追加と更新は5万円です。
Q4. 申請書はどこに出しますか
石川県知事許可は、主たる営業所を管轄する土木総合事務所に出します。郵送でも出せます。判断が分かれる書類は、事前に石川県土木部監理課に相談するよう手引きに書かれています。
Q5. 許可を取った後に毎年必要な手続きは何ですか
事業年度が終わってから4か月以内の決算変更届です。役員や営業所技術者が替わったときは変更の届け、5年ごとに更新の申請も必要です。
まとめ
異業種から石川県で建設業許可を取るときのポイントは、次の3つです。
- 許可が要る工事かを先に確かめる:500万円未満(消費税込み。建築一式は1,500万円未満など)の工事だけなら許可は要りません。
- 経営の経験と技術者をそろえる:どちらも建設業に関する経験や資格が要るため、異業種の会社は人の手当てから計画します。
- 申請先と手数料を手引きで確かめる:知事許可は管轄の土木総合事務所へ・新規は9万円(令和8年4月改訂版のしおり)。迷う書類は事前に県の監理課へ相談します。
手引きと様式は石川県土木部監理課のホームページで公開されています。申請の前に最新版を確かめ、必要に応じて建設業許可にくわしい行政書士に相談してください。
出典:石川県土木部監理課「建設業の許可申請のしおり」令和8年4月改訂版(PDF)・建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-10-06)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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